横浜HARTクリニック

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卵子提供について

皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか?

コロナウイルスによるCovid-19 も相変わらず猛威をふるい、豪雨による災害のニュースなどを見る度に心が痛み、一日一日を無事に過ごせることをとてもありがたく感じます。

 

さて、今日は卵子提供についてお話しましょう。

 

卵子提供という治療に最初に接したのは1993年、シカゴの体外受精施設へ留学した時です。

その後、2002年に帰国して、東京HARTクリニック勤務時代には、海外へ卵子提供による治療を受けに行く患者さんの子宮内膜準備のお手伝いをしたり、JISARTでの主に姉妹間の卵子提供に関して倫理委員を2年ほど務めたりして関わってきました。

 

そして、約2年ほど前から卵子提供支援団体OD-NETのマッチングを通じて、匿名の卵子ドナーからの卵子提供治療を実施しています。思った以上に卵子ドナーになりたいという方がいらっしゃいますが、実際に卵子提供まで進むのは希望者の25%程度です。電話での聞き取りの段階で不適になる方を含めればさらに減って10%位です。年齢が高いことや、卵巣予備能力が低いこと、時間的に通院が困難なこと等が主な理由です。また、卵子を提供することの意味、生まれてくる子の福祉や告知のことなどを説明して、こちらからお断りする場合もあります。

 

一方、レシピエント(卵子をもらう方)希望者はまだ少ないですが、こちらも実際に治療へと進む方は40%位です。辞退される方の多くは、改めて自分の年齢を考えた時に、無事に出産できるだろうか、子供が成人する時まで健康でいられるだろうか、様々な不安が生じたためです。

 

このように、ドナー、レシピエント共に卵子提供治療へ実際に進む方は多くありません。それでいいのです。ドナー希望者も、レシピエント夫婦も子供をこの世に送り出すことの責任をきちんと考え、覚悟を決め、生まれた場合には関与した全員が幸せになれることを確認した上で治療を進めるべきですから。

 

大事なことなので触れておきますが、当院で卵子提供治療をお受けする条件として、妊娠した際に、妊婦健診、分娩を引き受けてくれる施設を事前に確保することとしています。卵子提供による妊娠では、夫婦間の妊娠に比べて、出産時のリスクが高くなりますから、様々な状況に対応ができる施設から妊娠許可をもらうことが必用不可欠です。レシピエントが出産を希望する施設に、私が手紙を書いて、卵子提供によって妊娠した際に受け入れてもらえるかを伺っています。幸い、これまでに問い合わせた施設は全て受け入れ可能と返事をもらっています。

 

もう一点、匿名ドナーですから、匿名性を維持するためにドナーとレシピエントが接点を持たないよう非常に気を使います。電話予約から、治療のスケジュール管理、費用の支払い等、ドナー、レシピエント、OD-NET の3方向への連絡を全て、看護師長の平良さん一人にしてもらっています。コーディネーターとして窓口を一つにしておくことがとても重要です。通常の夫婦間の治療と同じ費用しかいただいていませんが、実際にかかる時間と気の使い方を考えると、2倍の料金をいただいてもいいと思っています。

 

卵子提供による不妊治療は日本でも受け入れられつつあると感じます。今後は、LGBT(Q)の方達も治療の場に登場してくることでしょう。大切なのは、時代が変化し、人々の意識が多様化する中で、生まれてくる子供の幸せを中心に、関与する人達がきちんと考えて進み責任を持つことです。

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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