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私がPGT-Aに積極的でない理由

「PGT-Aをやっていないのですか?」とよくご質問をいただくのですが、現時点では行っていません。理由は以下の3点です。

 

一つ目は、PGT-Aによって出産率が向上する、流産率が低下するという確実なエビデンスがまだ得られていないからです。

 

二つ目は、PGT-Aを行うために胚盤胞の栄養外胚葉(絨毛や胎盤になる部分)から5-10個の細胞を採取(生検、バイオプシー)しますが、それによる侵襲が大きいと思われるからです。絨毛や胎盤になる部分で胎児になる部分ではないから大丈夫と言われますが、絨毛の子宮内膜(脱落膜)への浸潤の仕方がその後の妊娠において、妊娠高血圧や胎児発育不全に関係すると考えられていますので、全く問題のない安全な手技とは言えないと思います。

さらに、染色体の本数が正常と判定された胚盤胞も、正常と判定されるためにわざわざバイオプシーのダメージを受けているわけです。胚はものを言いませんが、やはりせずに済むに越したことはありません。

 

三つ目は、21番染色体に関わることです。21番染色体が3本あるトリソミーの場合、その受精卵を移植して妊娠、出産に至ればダウン症の赤ちゃんが生まれます。PGT-Aによって移植前に21トリソミーであることがわかれば、ほとんどの患者さんはその胚を移植せず廃棄することを選択するでしょう。私はそのことにどうしても折り合いをつけられずにいるのです。これまで長くにわたって不妊診療をしてきた中で、何人かのダウン症の赤ちゃんが生まれました。その子供たちとそのご家族への思いから、どうしてもPGT-Aによって21トリソミー胚を選別することに抵抗があるのです。

 

PGTについては、これまでにもブログに書きました。2015年9月18日、2018年12月19日のブログも参照してください。

 

検査というものの恐ろしいところは、検査があるのにどうして受けないのかという、内的・外的圧力がかかることです。その検査が低侵襲なものであればあるほど受けないという選択をするための意志が必要になります。また遺伝学的な検査の場合、白黒つかない、予測しなかった検査結果がでることもあり、事前の遺伝カウンセリング、心構えが大切です。

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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