横浜HARTクリニック

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いかがお過ごしですか?

蒸し暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしですか?

前回の投稿から1カ月近く空いてしまいました。書こうかなと思いながら筆が進まず、なんとなく自分の心が定まらない感じの日々が続き、自然に任せているうちに時間が経ってしまいました。

その代りなのでしょうか、読みたいと思っていた本を2冊読みました。

1冊目は、George Orwell の「1984」。古典中の古典ですが、そのために題名は知っていても実は読んでいない人が多い本です。私も何年か前に買ってはいたのですが本棚に眠ったままになっており、今回きちんと読んでみました。いわゆる監視社会について、国民の生き方が風刺的に書かれていて、今の日本の状況と比較しながら読むと面白いと思います。自分ならどう生きるだろうか、主人公のWinston Smith の生き方をするか、その他大勢の生き方をするか、と考えたりするのですが、本文最後の1文(原文では4つの英単語)をみて愕然とします。

2冊目は、Henry Marsh の「Do no harm」(日本語にも訳されています)。イギリス人脳外科医の随筆です。ベストセラーになったようですが、確かに文章から人間に対する愛情が感じられ、医者としても人としても自分の心ときちんと向き合って書かれていると思います。医者と患者さんとの関わりにおいて、端的に言うと、その結果は次の3通りです。

(1)患者さんの望む通りの結果になって感謝される、(2)患者さんの希望通りの治療結果を出せずに治療を終了する、(3)治療前よりも患者さんの苦しみが増える。

脳外科医の Marsh にすれば、(1)は腫瘍が取りきれて完治すること、(2)は腫瘍を取り切れず手術が不完全に終わること、(3)は手術時に正常な神経を傷つけて麻痺を残すこと、でしょう。これらが臨場感を持って、正直に書かれています。私もロンドンに5年半いたので、会話の文章が生き生きと伝わってきて、Marsh の喜び、焦り、悲しみ、絶望が非常によくわかります。

そして先の3つは当然私自身の医者としての日常にも当てはまります。(1)は妊娠、出産に至ること、(2)は力及ばず治療を終了する旨説明すること、(3)はそういうつもりではなかったにしても、私の言動が患者さんを傷つけて治療がつらくなったり、治療の副作用として身体的な後遺症を残してしまうこと、です。(3)が生じないように努めてはいますが、自分が気付いていないだけかもしれません。

不妊治療を長く続けてくると、私にもMarsh のように書こうと思えば書けることはたくさんあります。患者さんから丁寧な手紙をいただいて、そうだったのかと気づくことも多く、また患者さんの中には自身で本を出版され、その中に私とのことを書いてくれた方々もいます。いつか私も本を書いてみてもいいかな、と思ったりもします。次の世代へ残せるものの一つですからね。

 

開業3周年を迎えます

7月7日で開業3周年を迎えます。

まだ振り返って思い出話をするほどの年月でもありませんが、私にとっては公私ともに密度の高い時間であり、その密度の高さは様々な人との関わりにあります。

第一は、患者さんとの関わりです。開業後も、東京HARTクリニック勤務時代から変わらない姿勢で、一人一人目の前の患者さんと真剣に向き合ってきました。しかし、ホームページの「院長紹介」にも書いたのですが、自分も年齢を重ねたせいか、これまでのように自分の年齢に近い患者さんと共に戦う「同志」的な思いから、「皆さんに幸せになって欲しいから自分の全力を尽くす」という思いへの変化を感じます。「この治療法がベストだろうか」と自問する毎日ですが、日々知識の吸収を怠らず、自分の頭で考えて、謙虚な気持ちを忘れないよう努めています。

第二は、スタッフとの関わりです。開業しなければ出会わなかったはずのスタッフ達と出会い、不妊治療という共通の目的を持って仕事をする機会を与えられました。「診療理念」の一つである教育を通して、スタッフ皆には、社会人としてどこに行っても通用するような人間になって欲しいという思いで関わっています。せっかく何かの縁で出会ったわけですから、「あの時は小うるさい院長だと思ったけど、今思えばありがたかったな」と思ってもらえたら本望ですね。

第三は、両親との関わりです。開業の翌年(一昨年)の7月に父が急逝し、昨年の12月に母が5カ月の入院生活の末に亡くなりました。医者になってからはあまり会う時間もなく、さらに開業する時には、もう親の死に目にも会えないだろうと覚悟はしましたが、開業後すぐに二人ともいなくなり、実際にどちらの死にも立ち会えませんでした。

今日は、父の3回忌と、母の七七日と1周忌を兼ねた法要を桑名で行い、納骨もしてきました。お互いの後を追うように亡くなった二人ですから、それぞれの遺骨を入れた袋を小さな木箱に一緒にいれて、菩提寺の納骨堂に納めてもらいました。手元に置いてあった遺骨を納骨したことで役目を果たしたと思うと同時に、寂しさも改めて感じます。

両親に対してはいろいろな思いがありますが、今一番心に残る言葉は、私が結婚する時に母が言った言葉です。私には兄弟がいないので、「これで自分たち(両親)が死んでも一人ぼっちにならずにすむね」と言ってくれました。その時にはあまり気にとめていなかったのですが、実際に両親がいなくなると、ありがたい言葉だと思います。

人は常に誰かと関わって生きています。人との関わりが希薄になりがちな時代だからこそ、私はアナログ的な人との関わり方も大事にしたいと思っています。診療スタイルも患者さんと時代のニーズに合わせて変えていく必要がありますが、機器だけに頼らず、きちんと話を聞く、丁寧に説明をする、五感による基本診察を行う、病気だけを診ないでその方の生活や思いも考慮する、といった医療の基本的な姿勢を今後も実践していきたいと思います。

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