横浜HARTクリニック

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AMHの測定方法が変わりました

暑い日が続いていますが、お元気にお過ごしですか?当院へ通院していただいている方々にはお礼申し上げます。

さて、表題のとおり、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定方法が変わりました。皆さん AMH の値はとても気になると思いますので、ご連絡、ご説明いたします。

当院は、AMH の測定を SRL という検査会社に依頼していますが、測定方法の変更に伴い、以下のような関係になるそうです。

(新測定値)= 0.852  x (旧測定値)-  0.230

例えば以前の方法で、2 ng/ml であった方は、新しい測定方法では、

0.852  x  2  –  0.230  =  1.474  (ng/ml)

と、3 割近く低い値になります。

いずれにしても、新測定方法ではこれまでの値よりも低くなりますので、以前にSRL で測定された数値と比較する場合には、注意が必要です。

今年の2月11日のブログにもAMH のことは書きました。数値に一喜一憂する必要はありませんが、こんな実地の情報も知っておかれると安心ですよね。

暑中お見舞い申し上げます

暑くなってきましたが、皆さん、いかがお過ごしですか?

私は、先週父の一周忌を終えました。直前のブログで開院2周年のことを書きましたが、父の死から1年という別の時間軸で振り返ってみると、見えなかったものが見えてくることもあり、人生というのは時間と空間が何重にも重なり合った深みのあるものなんだな、と改めて感じます。

さて、当院処置室の壁にある大きなコルクボードをご存知でしょうか?

お察しの方も多いと思いますが、出産報告と共に送っていただくことが多い赤ちゃんの写真を貼るために昨年末に設置したものです。院内に写真を貼ることに対しては、賛成、反対両意見があり、それぞれのクリニックが自分たちの判断で決めていますが、私は貼りたいと思っています。その理由は、以下の通りです。

私がこれまで関わってきた(東京、横浜HARTの)患者さんで写真を送ってくれる方の中に、「可愛いでしょう」という単なる自慢のために送ってくれる方はまずいません。殆どの方の文章から、「治療中はいろいろと辛いこともありましたが、ようやく出産までたどり着きました。子育てはまた不安でいっぱいですが、様々な方の応援で授かった命を責任を持って育てていきます」という決意が読み取れます。

不妊治療中は、妊娠中の方や子供連れの方を見かけると辛くなることも多いと思います。でも、誰の子供であっても、この世に生まれてきた子供の全てを愛しいと思っていただきたいし、少なくとも、同じ横浜HARTクリニックに通った仲間(同志)が送ってくれた写真の赤ちゃんの誕生を祝福してあげたいと思うのですが、私の驕りでしょうか?

クリニックの診療理念の7にある「社会貢献」。私たちが日々行う診療で力になれる方の数は微々たるものかもしれません。しかし、世界中で人の命が簡単に奪われてしまう時代に、生殖医療を通じて、一つ一つの命の尊さを皆さんと共有していきたいと思います。

いつから写真を掲示するかは未定ですが、ご意見があればぜひ院内設置の「ご意見箱」へ投書頂きますようお願いします。

開業から2年を迎えました

本日、7月7日で開業から満2年を迎えました。

偶然ですが、今日、カルテ番号1番の方(2年前の今日、開業日、に来院された方)が、二人目(凍結胚移植)の相談に来院されました。

2年は区切りではありますが、一人一人の患者さんと向き合うことを一日一日、365 x 2 = 730 日続けてきたら、2年という時間が経ったという感じです。今は、一日に20-30人(組)の患者さんを診察していますが、皆さんそれぞれに原因や背景が違い、また同じ患者さんでも、日によって求めるものが違います。それにどう応えていくか、いい意味での緊張の連続です。よく例えて言うのですが、一日の診療は、マラソンではなく、100メートルを全力で20-30回走るのに近いと思います。

スタッフにも常に、「患者さんから学ばせてもらう」ようにと指導しています。診療理念の一つである「患者さんに寄り添った」診療を実践できれば、患者さんは非常に多くのことを教えてくれます。その患者さんから学んだことを、他の患者さんに活かす。そして、それを繰り返すことで、より多くの患者さんを幸せにすることができ、スタッフ自身も成長する。生殖医療分野全体および社会一般に貢献できるように人材を教育することも、理念の一つなのですが、これは今後も継続課題です。

私は将来に保険をかける形の医療よりも、目の前の患者さんの悩みと向き合う形の医療により惹かれるので、卵子の凍結保存よりは、着床前検査、卵子の質の向上、卵子提供などに今後関わっていくと思います。倫理や子供の福祉を考えながら、社会のニーズに応じた不妊治療を提供していけるよう努力します。

良い卵子は作るべきか探すべきか?

体外受精にしても、タイミング性交にしても、妊娠するために重要なことは、いい卵子が精子と出会って受精することです。その際、いい卵子は作るべきなのか、探すべきなのか、という議論をすることができます。

目の前に得られた卵子が良くない場合、その卵子を良くすることが可能なら、体外受精を受ける方のは多くは、1回でうまくいくでしょう。卵子の質を改善する方法として、卵子の細胞質(ミトコンドリア)移植や核置換などが以前から提唱されていますが、科学的・医学的にはナイーブなレベルにとどまっています。iPS細胞から精子や卵子を作ることも可能になりつつありますが、体内で自然に作られる精子、卵子とまったく同じ性質のものであるかどうかはわかりません。

私自身の臨床と基礎研究の経験からみると、卵子という細胞は高度に分化していて、その働きは神秘的としか言いようがないくらいに巧妙で複雑です。受精後に一人の人間を作り上げるプログラムが、単純な人工的操作で改善できるとはとても思えません。

私が医学生から研修医の頃(1990年前半)には、遺伝子治療が注目されていて、私も非常に興味を持って勉強したことがあります。その際のガイドラインとして、遺伝子治療は体細胞(その人、一世代で終わる細胞)に限って行い、精子と卵子、つまり次の世代につながる生殖細胞には遺伝子を導入してはいけない、という常識がありました。したがって、上に書いたような、卵子を操作することには違和感があります。

さらに、体外受精がなかなかうまくいかない方々が、ようやくいい胚盤胞ができ、妊娠、出産に至るという経験を重ねると、「良い卵子は良いのだ」という当たり前なことに改めて感動を覚えます。次の世代を担う子供たちに対する責任を考えると、現時点では、不確かな点の多い卵子の質改善法よりは、良い卵子が得られるまで根気よく待つ方を選択したいと思います。

染色体が正常な受精卵の割合

体外受精・胚移植で、見た目はきれいな受精卵なのに、なかなか着床しない方はたくさんいらっしゃいます。すると、いつも「受精卵の問題なのか」あるいは「子宮の問題なのか」ということになります。

私は、よほど大きな子宮の問題がなければ、大半は「受精卵の問題」と考えています。日本では受精卵の着床前スクリーニング(PGS、最近は着床前検査、preimplantation genetic testing; PGTともいいます)が公式には認められていないので、どうしても海外のデータに頼ることになりますが、コンセンサスとしては以下の通りです。

胚盤胞まで育った受精卵の染色体(22対の常染色体とXY性染色体すべて)を調べてみると、正常な受精卵の割合は、女性年齢が30代前半で60%、30代後半で30-40%、40代になると20%以下です。この割合は5日目の胚盤胞でも、6日目の胚盤胞でも同じです。

さらに、染色体正常な胚盤胞を一旦凍結後、別周期に移植した場合の着床率は年齢に関わらず50-60%程度です。この理由は、染色体以外にも受精卵の力を左右する様々な条件(たとえば、ミトコンドリア)があるからです。

これらのデータから、1個ずつ胚盤胞を移植した場合の移植当りの妊娠率(= 着床率)は、女性年齢が30代前半で35%、30代後半で25%、40代では10%程度、ということになります。すなわち、30代前半では3個、30代後半では4個、40代では10個くらい移植する必要があるということです。もちろん最初に移植する胚で妊娠する方も多くいらっしゃいますが、もしうまくいかなかったとしても、あまり悲観的にならず、このくらいの個数移植する必要があるんだ、と考えてください。

よい受精卵を得ること、場合によっては凍結保存して貯めることが最大の目標です。採卵数の多い方少ない方、年齢の高い方低い方、流産経験のある方ない方など、皆さんの背景も異なりますから、どのような治療方針が良いかは十分に相談して決めるようにしています。

黄体補充のプロゲステロン腟剤について

今年1月27日のブログに凍結胚移植の際に使用するホルモン剤について書きました。値段が比較的高いので、類似品が国内認可販売されたら比較検討する旨お話ししました。

プロゲステロン腟剤については、当院では「ルティナス」を使ってきました。最近、同様の腟剤として、「ウトロゲスタン」と「ルテウム」という商品が認可販売されました。3商品とも海外では以前から使用されています。「ルティナス」はアプリケーターが付属されている扁平な錠剤、「ウトロゲスタン」はラグビーボールのような形の錠剤、「ルテウム」は長細い薬剤と、それぞれに特徴はありますが効果に差はありません。

一番気にしていた価格については、いわゆる横並びでしょうか、1日分の費用にすると結局、3商品ともほぼ同じでした。

これまで通り、「ルティナス」を中心に使用していく予定ですが、アプリケーターがうまく使えない方には「ウトロゲスタン」も考慮したいと思います。また、いずれの薬剤にしても、費用の負担が大きいことは確かなので、薬剤を使わずに済む排卵周期の凍結胚移植も積極的に考えるようにしています。

当院へ転院をお考えの方へ

当院では、タイミングから体外受精の方まで幅広く通院していただいていますが、次第に体外受精治療の方の割合が増えてきました。「体外受精を中心とした高度な不妊治療」を提供するために開院しましたので、クリニックとしての進歩だと思っています。

体外受精をご希望の方で、他のクリニックで上手くいかなかったという方も増えています。治療内容について細かなデータをお持ちでない方もいらっしゃいますが、できるだけ多くの情報をお聞きして、「どうして上手くいかなかったのか?」と考えることから、「その方にとっては何がベストなのか?」を導きだすようにしています。上手くいかなかった理由として、代表的なものが4つあります。

(1)低刺激周期を何回かトライしたがうまくいかなかった

卵巣予備能力のある方(AMHの数値が低くない方)には、刺激周期での採卵を行います。採卵数を増やすだけでなく、ご自身のホルモンバランスでは卵胞の発育が不十分なために卵子の本来の力を引き出せていない場合がありますので、卵巣刺激をすること自体に治療効果があります。特に、30代後半の方には効果が大きいです。

(2)凍結胚移植を何回かトライしたがうまくいかなかった

現在、胚凍結は胚盤胞に育ってから行う施設が大半ですから、胚の発育は良いということです。その後の凍結胚移植で結果が出ないのは、凍結・融解技術に問題があるか、胚盤胞には育っていても培養環境に問題があり凍結前の胚の質が低下しているか、などが考えられます。培養環境には相性もありますので、他のクリニック(当院に限らず)でトライしてみることもいいでしょう。

(3)年齢が高くAMHも低い

以前のブログでも書きましたが、AMHは卵子の「数」の指標であって「質」の指標ではありません。「質」の指標になるのは女性の年齢です。したがって、「年齢が高くAMHが低い」ということは「卵子の質が低下していて数も少ない」という難しい状況です。しかし、AMHの値にかかわらず、本来女性の年齢と共に良い卵子が育つ周期が減ってきますから(半年に1回とか、1年に1回とか)、どのような治療であっても1回で結果が出る率はかなり低くなります。ですから、ご自身の排卵周期が正常であれば、採卵とタイミング性交を組み合わせるなどして、1年または44歳になるまでを目途にトライしてみるとよいでしょう。

(4)重度の男性因子のために胚盤胞ができない

この場合、良い精子を採取できるかどうかにかかっています。射精された精液中に良い精子が見つからない場合は、手術によって精巣から直接精子を採取する方法(testicular sperm extraction; TESE)があります。また、以前にTESEで採取した精子で上手くいかないのであれば、別の施設で再度TESEをトライしてみることも一法です。

あらためて「寄り添う」治療について

昨年8月12日のブログで「寄り添う」治療について書きました。当院の最も大切な診療理念ですが、気をつけてみると、同じように寄り添うことを目標に掲げている医療機関を多く見ます。

なぜでしょうか? おそらく医療従事者の多くが、患者さんに「寄り添う」医療を理想としながらも、実際に「寄り添う」ということの難しさを実感するからでしょう。

私は、「寄り添う」ことは患者さんとの「適切な距離を保つこと」と考えています。その「距離」は患者さんにとって心地よい距離で、患者さんごとに異なります。特に不妊治療では、体のどこかが痛いから今すぐになんとかして欲しいという緊急性があるわけではありませんから、患者さんそれぞれの「心地よい適切な距離」を測る時間が十分にあります。

不妊治療は、「これまでこのように妊娠しようと努力をしてきたけれども上手くいかない、大丈夫かな、まずは話を聞いて欲しい」というところから始まります。初診の際にゆっくり話をすると、「積極的にアドバイスして引っ張って欲しい」という感じの方もいれば、「あまりいろいろ言わないでください、自分で一つ一つ考えて納得しながら進めたいから」という感じの方もいます。

それぞれの方に応じた適切な距離を保つこと、すなわち寄り添うことは、その方が不妊治療を始めて、つらいと感じずに続けていけるかどうか、を左右する非常に重要なことなのです。

治療のストレスを少しでも減らしたい

患者さんから、胚移植後から妊娠判定採血までの約10日間を、「試験の合格発表を待つような、落ち着かない、長い日々です」と言われることがよくあります。

実際に、不妊治療 1 周期の中で、この妊娠結果がわかるまでの約10日間に最もストレスがかかるというデータがあります。採卵までの、注射をしたり、超音波検査に通ったり、という自分で何かをする(できる)主体的な時期に比べて、移植後妊娠判定日までは待つことが主な受身の時期になりますから、10日間という日数は非常にもどかしく感じられます。いつも勉強、仕事、家庭において、自分が努力することで満足できる結果を手に入れてきた頑張り屋さんタイプの方が多いので、特にこのもどかしさはつらいと思います。

この落ち着かない時期のストレスを少しでも減らすために、私たちクリニックスタッフにできることは、当たり前ですがその治療周期に最善を尽くすことです。生理開始直後の超音波診察に始まり、卵巣刺激方法の選択、注射の種類・量の決定、診察日の調整、採卵日の決定、子宮内膜の状態や卵胞数を考慮して移植日を決定、新鮮胚移植を行うか、全胚凍結にするか、などきめ細かく治療していくと、その方々、また同じ方でも生理周期による微妙な違いが見えてきます。その細部にこだわることで治療結果に差も生まれます。特に、他の施設で結果が出ずに当院へ来られ、比較的すんなりと結果が出る方の中には、こういうきめの細かさが大切な方がいます。

「この治療周期には、自分もスタッフも最善が尽くせた」と思えれば、「あとは結果を待つしかない」と、思いつめた気持ちから少し解放されるのではないでしょうか?不妊治療には、良い卵子と精子が出会えたかどうか、というどうしても確率的な部分がありますので、全てをコントロールするわけにはいきません。

先日ある受験予備校の広告に、「この塾に通えば、先輩たちと同じように合格できると信じて頑張りました」とありました。不妊治療クリニックも同様かもしれません。具体的な数字に表された実績と、「このクリニックに通えば妊娠できそうな気がする、このクリニックなら通えそうな気がする」という信頼関係が、よい結果と辛くない治療経験につながるのだと思います。

抗ミュラー管ホルモン(AMH)について

抗ミュラー管ホルモン(anti-Mullerian hormone, AMH)という名前をご存じの方は多いと思いますが、正しく理解していらっしゃるでしょうか?

AMH は、卵巣内の直径 2-6 mm の卵胞から産生されます。卵子そのものではなく、顆粒膜細胞が産生し、血液検査で調べることができます。FSH(卵胞刺激ホルモン)と違って月経周期内および周期間の変動が少ないため、いつでも(生理何日目でも)測ることができますし、頻繁に測る必要もありません。

直径 2-6 mm の卵胞というのは、卵巣刺激に反応する大きさの卵胞です。自然周期では 1 個しか育たない卵胞が、注射などの卵巣刺激をしたら何個くらい育つかという「数の指標」となるので、「卵巣予備能力 (ovarian reserve)」と呼ばれます。よくマスコミなどで「卵巣年齢」と言われますが、誤解を招くあいまいな表現で正しくありません。確かに女性の年齢とともに卵胞の数は減りますから AMH の値も下がっていきますが、必ずしも個々の卵胞(卵子)の質を表しているわけではなく、妊娠できるかどうかという「質の指標」にはなりません。

卵子の質に最も影響するのは、女性の年齢です。したがって、AMH が 1 の 30歳の方と AMH が 3 の 40歳の方とでは、前者の方が妊娠に至る可能性は高いのです。

それでは何のために AMH を測るのでしょうか?私は 2 つの理由で測っています。1 つは、治療を進めていく時間的余裕を見るためです。卵子の数が減ると治療の選択肢が減るので、AMH の値が高いうちに治療を進めたいと思っています。もう 1 つは、体外受精へ進む場合、卵巣刺激が有効かどうか、有効ならどういう方法が効果的で安全かを見るためです。

最後に、AMH の数値を見る際に、単位に注意してください。いぜんは pmol/L (pM) という単位でしたが、現在は ng/ml という単位を用いています。pM 単位を 7.14 で割った数字が ng/ml になります。

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