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当院では、昨年4月の不妊治療への保険適応以降も、皆様には十分に時間をかけて説明し、シンプルかつ医学的根拠に基づいた治療を、安心して受けていただきたいという、開業当初からの診療理念に基づいて自費診療を行ってまいりました。
そして今もなお、自費診療を続けている最大の理由は、「お一人おひとりを大切にする」という思いです。
当院をお選びいただき、ご通院されている方は、転院して来られる方がほとんどで、転院理由としては、
「毎回数時間の待ち時間で治療自体が辛くなった」
「機械的な(ベルトコンベアにのせられているような)扱いをされてきた」
「医師・スタッフからの説明が非常に少なく、自分が一体何の治療をされているか分からない」
といったことをおっしゃいます。
検査の種類が多いから、スタッフが大勢いるから、治療周期数が多いから安心、という方たちばかりではないのです。
心から子供が欲しいと願うこの私を、他の誰でもない私として見て治療して欲しいという方たちが多くいらっしゃるのです。
当院は、スタッフは少数体制ですし、検査は医学的な根拠(エビデンス)があるシンプルなものだけ、年間治療周期数もそれほど多くはありません。
しかし、当院1回目の採卵もしくは1回目の移植での出産率は60%を超えています。他施設でうまくいかなかった方々であることを考えれば、かなり高い出産率です。
なぜ、シンプルな治療なのに出産率が高いのでしょうか。それは、
(1) 完全予約制のため、待ち時間がないこと
(2) お一人(ご夫婦)あたり30分の診察時間枠をお取りしているため、疑問に思うことや不安なことを落ち着いて相談していただける環境があり、安心して通院できること
だと思います。治療行為とは直接関係がないけれども、通院を続ける上では大きなストレスになるものを取り除くことでリラックスでき、その方の本来の妊孕力(にんようりょく)を引き出し、高い出産率に表れるのだと感じています。
当院が大切にしている、患者さんと共有する時間は、自費診療でしか十分に取れないことは事実です。
診療内容や質、患者さんの満足度も自費診療は高く優れていると考えます。
しかしながら、「自費診療のみを行う」というクリニックの方針が、世情を含め、徐々に許されない状況になってきていると言わざるを得ません。
苦渋の決断ではございますが、院内での話し合いの末、この度、保険診療の運営も開始する運びとなりました。
開始にあたり、
(a) 体外受精(顕微授精)または人工授精の経験がある方で、
(b) 保険診療の範囲内で、有効かつ安全に治療が可能と判断される方
を対象とさせていただき、さらに当院で定めるいくつかの条件に当てはまる方とさせていただきます。詳細は必ずホームページ、「初診の方へ」をご確認下さい。
予約枠など自費診療の方を優先させていただきますので、自費診療の場合ほどには十分な時間をお取りできないことをご了承ください。
横浜HARTクリニックの良さ、それは「技術」と「看護力」です。人を診る「心」です。はじめに書いたように「お一人おひとりを大切にする」思いです。
不妊治療は本来つらいものではありません。お悩みの方は、ぜひお問い合わせ下さい。
最後になりましたが、
(i) 昨年の4月以降も当院の治療方針をご理解いただき、自費で治療を受けていただいた方々、
(ii) 今現在ご通院いただいている方々
には、この場を借りて深く感謝申し上げます。
そして、クリニックの方針を一部変更する運びとなりましたことを心よりお詫び申し上げますとともに、ご理解いただきますようお願い申し上げます。
なお、(i)、(ii)の自費診療の方々に関しましては、それぞれの方の治療歴や検査所見を参考に、採卵周期では卵巣刺激に使用する注射薬の「量」、凍結胚移植周期では使用するホルモン剤の「種類」や「診察回数」において、保険診療の制約の中ではできない、最善の治療となるよう配慮させていただいていることを申し添えておきます。
2023年10月31日
院長 後藤哲也
東京大学医学部卒業
産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)
アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設
イギリスロンドン大学大学院 医学博士(生殖遺伝学)
オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設
東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医