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卵子提供に思うこと

皆さん、こんにちは。毎日暑い日が続きますね。

 

前回のブログで卵子提供に触れましたが、もう少しお話しましょう。

 

誰かに卵子をあげる人を提供者(donor、ドナー)といい、卵子をもらう人を被提供者(recipient、レシピエント)といいます。卵子提供による不妊治療において、金銭の授受を伴うものを有償、伴わないものを無償と呼びます。卵子提供者の身元を隠して提供する場合、匿名ドナーといい、身元を明かす場合を非匿名ドナーと言います。

 

最近、あるエージェントを通して、匿名、無償で、卵子ドナーになりたい日本人の方々と接する機会がありました。なぜ無償で卵子ドナーになりたいのかと尋ねたところ、多くの方が「自分は妊娠、出産の予定がないので、卵子提供という形で自身のDNAを残したい」と回答されました。無償での提供の場合、altruistic(利他的、愛他的)という英語をあてることが多いのですが、この回答は純粋な altruism ではないですね。自身のDNAを残したいというところに利己が存在しています。

 

理想を言えば、妊娠、出産経験のある女性が、自分の妊娠、出産、子育てを通して、子供を産み育てることがどれだけ大変なことか、でもその大変さに見合うだけの人生経験を与えてくれる、そのような経験を心から望む夫婦のために何の見返りもなく卵子を提供してもいい、という場合をaltruismと言うのでしょう。

 

匿名性について言えば、匿名、非匿名はドナー、レシピエント共にそれぞれの希望により、どちらが良いとは言えません。しかし、レシピエントにしてみれば、ドナーの身元は伏せられていても(匿名)、身長や体格、趣味(運動が好きか、静かに本を読むことが好きか)、どんな仕事をしているのかなどの情報は欲しいのではないでしょうか。今は、卵子提供によって生まれてくる子供達には、卵子提供によって生まれたことを告げる(出自の告知といいます)のが通常ですから、必要な情報だと思います。

 

また、ドナーが匿名でいたいと思い、現在の法律でその権利が守られているとしても、10年20年後にもその法律が有効であるとは限りません。子が出自を知る権利を主張し、ドナーの身元を明かすように申し出て、その権利が法的に認められるようになれば、ドナーの匿名性は守られないでしょう。

 

卵子提供は様々な課題を含んでいます。国ごとに文化も違いますから、いろいろなやり方があると思います。しかし、すべては生まれてくる子供の幸せが最優先です。日本で卵子提供が根付くかどうか、まずドナーになりたい人がどのくらいいるのか、そしてどのような動機でドナーになりたいのか、把握したいと思っています。そして、常に10-20人のドナー希望者が確保できるようであれば、卵子提供を治療の一つとして行うことができるのではないでしょうか。

 

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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