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着床前診断(PGT-A)について

皆さん、こんにちは。変わりありませんか?2018年も残り2週間、平成最後の年末になりましたね。

さて、先日(12月16日)日本産科婦人科学会倫理委員会主催の公開シンポジウム、「着床前診断―PGT-A 特別臨床研究の概要と今後の展望―」に参加しました。何年か前にも同じテーマのシンポジウムに参加しましたが、今回は日本国内で実施された80組程度の夫婦の着床前診断の結果についての報告であり、新聞記事をご覧になった方も多いのではないかと思います。

私は今から25年前、1993年にアメリカで受精卵の性別を調べる研究をしていました(2015年9月18日のブログ参照)が、その後着床前診断は技術的な発展を遂げ、近年は遺伝子疾患だけではなく、46本全ての染色体の構造異常や本数の異常をも調べられるようになりました。

今回のシンポジウムで特に議論されたのは、着床前診断の中でも染色体の本数の異常を調べるもの、preimplantation genetic test for aneuploidy (PGT-A) です。妊娠初期の流産の原因で最も多いものは胎児の染色体異常であり、今回の臨床研究は体外受精による着床不全や初期流産を繰り返す習慣性流産の患者さんにPGT-A を行い、正常胚を選択して移植することで妊娠、出産率が向上するかを調べたものです。これまでのデータ解析では改善傾向が認められるとのことでした。

ヒトは合計46本の染色体(1番から22番までの22対の常染色体44本と、XX または XY の性染色体2本)を持っています。対になっているのは、父親(精子)と母親(卵子)から同じ番号の染色体を1本ずつ受け継ぐからです。同じ番号の染色体が正常の2本ではなく、3本ある場合をトリソミー、1本しかない場合をモノソミ―といい、「いずれの場合も」妊娠初期に流産します。したがって、PGT-A によって各染色体の本数を調べ、正常な受精卵のみを移植することで移植あたりの出産率は向上するはずです。

ここで倫理的な問題が出てくるのですが、以下に説明します。

3行上に「いずれの場合も」と書きましたが、正確ではありません。正確には、「13番、18番、21番のトリソミーの一部を除くいずれの場合も」になります。13番、18番、21番トリソミーも多くは初期流産に終わりますが、一部の受精卵は妊娠初期を乗り越えて出産まで進みます。

PGT-A によって正常な受精卵があった場合には、その正常な受精卵をを移植します。従ってもし、13番、18番、21番トリソミーを持つ受精卵があったとしても、その他の異常受精卵と同様に流産する受精卵として廃棄され、あまり意識されないと思います。

しかし、正常な受精卵がなく、21番トリソミー(ダウン症)を持つ受精卵があった場合に、流産する可能性が高いが、うまくいけば赤ちゃんを出産できる。移植するか、廃棄するか。まさに命の選択を問われることになります。

不妊治療には正解はありません。それぞれの夫婦が置かれた状況によって、自ら考えて決定し行動するしかありません。一所懸命考えて悩んで出した結論なら、それが正解です。PGT-A も国内で実施が認められれば、受けるか受けないかは、各夫婦が十分な説明を受けた上で決めて欲しいと思います。

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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