横浜HARTクリニック

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移植胚の優先順位付け

皆さん、こんにちは。新年度を迎えて、お忙しい日々をお過ごしのことかと思います。まだ寒暖の差が大きいですから、お互い体調には気をつけましょう。

 

さて今回は、複数ある胚を移植する際に、どの胚から移植するか(優先順位付け)について考えてみます。

そもそも自然周期で採卵する場合は、原則1個しか卵子が得られませんから、得られる胚も1個(または0個)で、順位付けは必要ありません。しかし、自然周期では採卵あたりの妊娠率が低いので、当院では、卵巣刺激によって複数の卵子を採取し、複数の胚を得て、それらの胚に移植の順番をつけることになります。

 

移植胚の順位付けは、今も昔ももっとも一般的な方法は、形態(見た目)によるものです。現在は胚盤胞まで育てて評価することが多いです。ガードナー分類が広く用いられていますが、100%客観的に評価することは難しく、細胞の透明度であったり、フラグメントの量であったりと、基準にない観察所見や、患者さんの臨床背景なども加味して、移植の順位付けを行います。

 

しかし、どんなに綺麗な受精卵でも着床しないことも多く、その理由の一つに染色体の異常があることから、PGT-Aが行われるようになりました。胚盤胞まで培養することとあいまって、今は栄養外胚葉(TE)を採取して調べる方法が一般的です。これは、100個ほどあるTE細胞の中の5-10個程度を採取して調べるため、TE全体を表していない可能性があります。さらに、TEは将来胎盤になる部分であり、赤ちゃんになる細胞ではありません(その部分は内細胞塊、ICM)。

 

従って、TE生検(バイオプシー)では、偽陽性(ICMは正常なのに、TEは異常とでる)のために移植されずに廃棄されてしまう胚が生じることがあります。また逆に、偽陰性(ICMは異常なのに、TEは正常とでる)のために移植されることもあります。

 

さらに、PGT-Aによって正常胚と判断された胚を移植しても、出産率は50%と、形態による評価(順位付け)とさほど大きくは変わりません。上に述べたような、偽陰性によるものに加えて、生検(バイオプシー)による胚へのダメージが大きいと考えられます。

 

そこで、胚に侵襲を加えない評価法として、受精卵が培養液中に放出した物質を調べる方法があります。DNA、RNA、蛋白質がありますが、現時点ではDNAが一番解析されています。培養液中に存在するDNAが胚盤胞のどの細胞に由来するかはわかっていませんが、おそらく全体から放出されると考えられています。つまり、TE生検で得られる5-10個の細胞よりは、胚盤胞全体の状態を表している可能性があります。また、DNAの解析をあまり深く行わずに結果をパターンとして評価すれば、個々の胚の遺伝情報を扱うことにはならないでしょう。

 

DNAにせよ、RNA、蛋白質にせよ、培養液中にあるものを用いて胚を評価し、移植の優先順位をつけることを「非侵襲的な胚の優先順位付け」(non-invasive preimplantation embryo ranking; niPER)と呼んではどうでしょうか。

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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