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PGT-P をご存知ですか

皆さん、こんにちは。

 

今年の夏もまた、各地で水の被害が出ています。被災地の方々には、心よりお見舞い申し上げます。温暖化対策についてもっと危機感を持って臨まないと、日本という国が沈んでしまうのではないかと心配です。

 

この何年か、着床前診断について何かと話題にのぼっていますから、PGTという英語の略語も多くの方がご存知でしょう。現時点では、PGTは、PGT-A、PGT-M、PGT-SRの3つに分類されています。「A」は aneuploidy、皆さんが一番よく知っている、染色体の数の異常を調べるものです。「M」は monogenic disease、単一の遺伝子が原因で起こる遺伝病の診断をいい、「SR」はstructural rearrangement、転座など染色体の構造異常を扱うものです。

 

30年近く前、私が受精卵の性別を調べていた頃(Y染色体があるかどうか)は、ヒトのゲノムや遺伝子についてはまだ断片的にしかわかっていませんでした。しかし、当時新たにPCR(今は新型コロナウィルスの検査でよく耳にしますね)という方法が開発されたことで、遺伝子(DNA配列)の異常部分さえわかれば、受精卵から得られる細胞1個からでも、遺伝病を診断することが可能になりました。当時これを、preimplantation genetic diagnosis (PGD) と呼んでいました。今でいうPGT-M ですね。PGT-M では原則、一つの遺伝病に対して、原因となる遺伝子が一つ対応します(単一遺伝子疾患、monogenic の頭文字 M です)。

 

それに対して、21世紀に入ってゲノム解析技術が飛躍的に進んだことで、糖尿病や心臓病、癌などには、一つの遺伝子ではなく複数の遺伝子がかかわっていることがわかってきました。その複数の遺伝子の多様性パターンを調べることを、複数遺伝子、polygenic の頭文字をとってPGT-P と呼ぶことが提唱されています。

 

これが良いことなのかどうか。糖尿病や心臓病、癌にかかりやすいとは言っても必ずしもかかるわけではなく、生活習慣を変えることで予防できるかもしれません。しかし、知ってしまった以上は、かかりやすい遺伝子パターンを持つ受精卵よりは、かかりにくい遺伝子パターンを持つ受精卵を選ぶでしょう。「個性」も同じです。背が低いよりは高いほうがいいとか、見た目のいいほうがいいとか、運動神経がいいほうがいいとか、歌がうまいほうがいいとか、視力がいいほうがいいとか。子供を授かりたいとシンプルに願うはずの不妊治療が、受精卵(子供)を選ぶことになってしまう懸念があります。昔から、いつか「デザイナーベイビー」の時代が来るだろうと言われていましたが、いよいよな感じがします。

 

私自身、家系的に血糖値が高く、この数年低糖質ダイエットをしています。今の時代に受精卵であったら、選ばれず、この世に生まれることがなかったタイプかもしれません。そういう意味では両親に感謝です。

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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