横浜HARTクリニック

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治療のストレスを少しでも減らしたい

患者さんから、胚移植後から妊娠判定採血までの約10日間を、「試験の合格発表を待つような、落ち着かない、長い日々です」と言われることがよくあります。

実際に、不妊治療 1 周期の中で、この妊娠結果がわかるまでの約10日間に最もストレスがかかるというデータがあります。採卵までの、注射をしたり、超音波検査に通ったり、という自分で何かをする(できる)主体的な時期に比べて、移植後妊娠判定日までは待つことが主な受身の時期になりますから、10日間という日数は非常にもどかしく感じられます。いつも勉強、仕事、家庭において、自分が努力することで満足できる結果を手に入れてきた頑張り屋さんタイプの方が多いので、特にこのもどかしさはつらいと思います。

この落ち着かない時期のストレスを少しでも減らすために、私たちクリニックスタッフにできることは、当たり前ですがその治療周期に最善を尽くすことです。生理開始直後の超音波診察に始まり、卵巣刺激方法の選択、注射の種類・量の決定、診察日の調整、採卵日の決定、子宮内膜の状態や卵胞数を考慮して移植日を決定、新鮮胚移植を行うか、全胚凍結にするか、などきめ細かく治療していくと、その方々、また同じ方でも生理周期による微妙な違いが見えてきます。その細部にこだわることで治療結果に差も生まれます。特に、他の施設で結果が出ずに当院へ来られ、比較的すんなりと結果が出る方の中には、こういうきめの細かさが大切な方がいます。

「この治療周期には、自分もスタッフも最善が尽くせた」と思えれば、「あとは結果を待つしかない」と、思いつめた気持ちから少し解放されるのではないでしょうか?不妊治療には、良い卵子と精子が出会えたかどうか、というどうしても確率的な部分がありますので、全てをコントロールするわけにはいきません。

先日ある受験予備校の広告に、「この塾に通えば、先輩たちと同じように合格できると信じて頑張りました」とありました。不妊治療クリニックも同様かもしれません。具体的な数字に表された実績と、「このクリニックに通えば妊娠できそうな気がする、このクリニックなら通えそうな気がする」という信頼関係が、よい結果と辛くない治療経験につながるのだと思います。

抗ミュラー管ホルモン(AMH)について

抗ミュラー管ホルモン(anti-Mullerian hormone, AMH)という名前をご存じの方は多いと思いますが、正しく理解していらっしゃるでしょうか?

AMH は、卵巣内の直径 2-6 mm の卵胞から産生されます。卵子そのものではなく、顆粒膜細胞が産生し、血液検査で調べることができます。FSH(卵胞刺激ホルモン)と違って月経周期内および周期間の変動が少ないため、いつでも(生理何日目でも)測ることができますし、頻繁に測る必要もありません。

直径 2-6 mm の卵胞というのは、卵巣刺激に反応する大きさの卵胞です。自然周期では 1 個しか育たない卵胞が、注射などの卵巣刺激をしたら何個くらい育つかという「数の指標」となるので、「卵巣予備能力 (ovarian reserve)」と呼ばれます。よくマスコミなどで「卵巣年齢」と言われますが、誤解を招くあいまいな表現で正しくありません。確かに女性の年齢とともに卵胞の数は減りますから AMH の値も下がっていきますが、必ずしも個々の卵胞(卵子)の質を表しているわけではなく、妊娠できるかどうかという「質の指標」にはなりません。

卵子の質に最も影響するのは、女性の年齢です。したがって、AMH が 1 の 30歳の方と AMH が 3 の 40歳の方とでは、前者の方が妊娠に至る可能性は高いのです。

それでは何のために AMH を測るのでしょうか?私は 2 つの理由で測っています。1 つは、治療を進めていく時間的余裕を見るためです。卵子の数が減ると治療の選択肢が減るので、AMH の値が高いうちに治療を進めたいと思っています。もう 1 つは、体外受精へ進む場合、卵巣刺激が有効かどうか、有効ならどういう方法が効果的で安全かを見るためです。

最後に、AMH の数値を見る際に、単位に注意してください。いぜんは pmol/L (pM) という単位でしたが、現在は ng/ml という単位を用いています。pM 単位を 7.14 で割った数字が ng/ml になります。

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