横浜HARTクリニック

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あらためて「寄り添う」治療について

昨年8月12日のブログで「寄り添う」治療について書きました。当院の最も大切な診療理念ですが、気をつけてみると、同じように寄り添うことを目標に掲げている医療機関を多く見ます。

なぜでしょうか? おそらく医療従事者の多くが、患者さんに「寄り添う」医療を理想としながらも、実際に「寄り添う」ということの難しさを実感するからでしょう。

私は、「寄り添う」ことは患者さんとの「適切な距離を保つこと」と考えています。その「距離」は患者さんにとって心地よい距離で、患者さんごとに異なります。特に不妊治療では、体のどこかが痛いから今すぐになんとかして欲しいという緊急性があるわけではありませんから、患者さんそれぞれの「心地よい適切な距離」を測る時間が十分にあります。

不妊治療は、「これまでこのように妊娠しようと努力をしてきたけれども上手くいかない、大丈夫かな、まずは話を聞いて欲しい」というところから始まります。初診の際にゆっくり話をすると、「積極的にアドバイスして引っ張って欲しい」という感じの方もいれば、「あまりいろいろ言わないでください、自分で一つ一つ考えて納得しながら進めたいから」という感じの方もいます。

それぞれの方に応じた適切な距離を保つこと、すなわち寄り添うことは、その方が不妊治療を始めて、つらいと感じずに続けていけるかどうか、を左右する非常に重要なことなのです。

治療のストレスを少しでも減らしたい

患者さんから、胚移植後から妊娠判定採血までの約10日間を、「試験の合格発表を待つような、落ち着かない、長い日々です」と言われることがよくあります。

実際に、不妊治療 1 周期の中で、この妊娠結果がわかるまでの約10日間に最もストレスがかかるというデータがあります。採卵までの、注射をしたり、超音波検査に通ったり、という自分で何かをする(できる)主体的な時期に比べて、移植後妊娠判定日までは待つことが主な受身の時期になりますから、10日間という日数は非常にもどかしく感じられます。いつも勉強、仕事、家庭において、自分が努力することで満足できる結果を手に入れてきた頑張り屋さんタイプの方が多いので、特にこのもどかしさはつらいと思います。

この落ち着かない時期のストレスを少しでも減らすために、私たちクリニックスタッフにできることは、当たり前ですがその治療周期に最善を尽くすことです。生理開始直後の超音波診察に始まり、卵巣刺激方法の選択、注射の種類・量の決定、診察日の調整、採卵日の決定、子宮内膜の状態や卵胞数を考慮して移植日を決定、新鮮胚移植を行うか、全胚凍結にするか、などきめ細かく治療していくと、その方々、また同じ方でも生理周期による微妙な違いが見えてきます。その細部にこだわることで治療結果に差も生まれます。特に、他の施設で結果が出ずに当院へ来られ、比較的すんなりと結果が出る方の中には、こういうきめの細かさが大切な方がいます。

「この治療周期には、自分もスタッフも最善が尽くせた」と思えれば、「あとは結果を待つしかない」と、思いつめた気持ちから少し解放されるのではないでしょうか?不妊治療には、良い卵子と精子が出会えたかどうか、というどうしても確率的な部分がありますので、全てをコントロールするわけにはいきません。

先日ある受験予備校の広告に、「この塾に通えば、先輩たちと同じように合格できると信じて頑張りました」とありました。不妊治療クリニックも同様かもしれません。具体的な数字に表された実績と、「このクリニックに通えば妊娠できそうな気がする、このクリニックなら通えそうな気がする」という信頼関係が、よい結果と辛くない治療経験につながるのだと思います。

抗ミュラー管ホルモン(AMH)について

抗ミュラー管ホルモン(anti-Mullerian hormone, AMH)という名前をご存じの方は多いと思いますが、正しく理解していらっしゃるでしょうか?

AMH は、卵巣内の直径 2-6 mm の卵胞から産生されます。卵子そのものではなく、顆粒膜細胞が産生し、血液検査で調べることができます。FSH(卵胞刺激ホルモン)と違って月経周期内および周期間の変動が少ないため、いつでも(生理何日目でも)測ることができますし、頻繁に測る必要もありません。

直径 2-6 mm の卵胞というのは、卵巣刺激に反応する大きさの卵胞です。自然周期では 1 個しか育たない卵胞が、注射などの卵巣刺激をしたら何個くらい育つかという「数の指標」となるので、「卵巣予備能力 (ovarian reserve)」と呼ばれます。よくマスコミなどで「卵巣年齢」と言われますが、誤解を招くあいまいな表現で正しくありません。確かに女性の年齢とともに卵胞の数は減りますから AMH の値も下がっていきますが、必ずしも個々の卵胞(卵子)の質を表しているわけではなく、妊娠できるかどうかという「質の指標」にはなりません。

卵子の質に最も影響するのは、女性の年齢です。したがって、AMH が 1 の 30歳の方と AMH が 3 の 40歳の方とでは、前者の方が妊娠に至る可能性は高いのです。

それでは何のために AMH を測るのでしょうか?私は 2 つの理由で測っています。1 つは、治療を進めていく時間的余裕を見るためです。卵子の数が減ると治療の選択肢が減るので、AMH の値が高いうちに治療を進めたいと思っています。もう 1 つは、体外受精へ進む場合、卵巣刺激が有効かどうか、有効ならどういう方法が効果的で安全かを見るためです。

最後に、AMH の数値を見る際に、単位に注意してください。いぜんは pmol/L (pM) という単位でしたが、現在は ng/ml という単位を用いています。pM 単位を 7.14 で割った数字が ng/ml になります。

凍結胚移植周期のホルモン剤について

刺激周期採卵による体外受精の良いところは、複数の受精卵を得られることです。よい受精卵が複数あれば凍結保存ができるため、採卵を繰り返すことなく、胚移植(新鮮胚移植と凍結胚移植)を複数回行え、1回採卵あたりの妊娠率(累積妊娠率)を上げることができます。

当院も刺激周期を中心に行っていますので、採卵をする方が増えるのに伴って凍結胚移植周期も増えてきました。凍結胚を移植する際には、(1) 自然排卵周期に戻す、または (2) 自分の排卵を抑えホルモン剤を使用して子宮内膜を準備した周期(ホルモン補充周期)に戻す、のどちらかを選択しています。どちらにするかは、その方のホルモンバランスや通院できる回数などを考慮して決めています。

(2) のホルモン補充周期を選択した場合には、卵胞ホルモン(エストロゲン)の飲み薬と黄体ホルモン(プロゲステロン)の腟剤を使用します。以前はこの2種類のホルモン剤が日本国内で販売されていなかったため、海外から個人輸入して使用していました。海外製品にはジェネリック製剤もあるため、価格も比較的安く購入できます。しかし、現在では、2種類ともに日本国内で認可された製剤があるため、価格以外に敢えて海外製品を輸入して使用する理由がなくなってしまいました。

また、輸入製品を使用中の方が、他の医療機関(特に婦人科以外)を受診された際に、何の薬かわからず、混乱を招くことがあります(実際にありました)。さらに、万一、薬による副作用が出た場合にも、国内で認可されていない薬剤ですと、保険会社からの給付適応にならない場合もあります。

以上のような点を考えて、現在当院では、ホルモン補充には、価格は高くなりますが、安心して使用していただける国内認可薬剤を処方していますので、ぜひご理解ください。今後、日本国内でも低価格のジェネリック製品、あるいは同種薬剤が発売になりましたら、もちろん検討します。

今年もよろしくお願いします

皆さん、2016年が始まりました。本年もよろしくお願いいたします。

皆さんはどこへ初詣に行かれますか?私は横浜に住むようになってからは、毎年元旦に桜木町の伊勢山皇大神宮へ出かけます。伊勢山皇大神宮へ参拝するようになった理由は、横浜出身の妻が小さい頃から行っていたからですが、何か縁があるような気がします。

私は、三重県桑名市の出身で、大学に入って東京に来るまでは、毎年伊勢神宮に初詣に行っていました。車で2時間ほどかけて出かけ、内宮と外宮を参拝します。どちらも広大な敷地内にあり、砂利道を歩くうちに自然と厳かな気分になったものでした。参道には色々な店があり、参拝帰りにはいつも、甘いものが大好きだった祖父が赤福の本店で搗き立ての赤福餅を食べさせてくれました。

名前が示す通り、伊勢山皇大神宮は伊勢神宮の流れを汲むので、ここに参拝するのも何かの縁なのでしょう。願いは毎年同じです。家内安全、世界平和、そして患者さん、スタッフ皆が幸せになれるよう、祈願しています。

さあ、今年も一緒に頑張りましょう。

 

 

良いお年をお迎えください

皆さん、それぞれの場所で、様々な方々と大晦日をお過ごしでしょうね。

私は、クリニックで事務作業を終えた後、自宅で過ごしています。たまった書類を整理したりしながら、頭の中ではもう来週からの診療のことをいろいろと考えています。

妊娠には良い卵子と良い精子が必要で、良い卵子が得られないために妊娠できない場合のほうが圧倒的に多いことは、皆さんご存じのことでしょう。良い卵子が得にくい最大の原因は女性の年齢ですが、体質的に年齢が低くてもなかなか良い卵子が育ちにくい方もいます。それでは、良い卵子を得るためにどうしたらよいのでしょうか?

一つの考えは、「得られた卵に手を加えて良くすること」。例えば、自分自身または他人の細胞からミトコンドリアを取り出して卵子に注入するという方法があります。ミトコンドリアは細胞内でATPというエネルギーを産生する器官で、卵子の質に関係していると考えられているからです。同様な手法(厳密には卵子間の細胞質置換)は15年ほど前にアメリカで行われ出産例もありますが、児に異常が見られた例もあり、その後禁止されました。最近また臨床応用が検討されているようですが、慎重に見守る必要があります。

別の考えは、「辛抱強く良い卵子が得られるまで待つこと」。もちろん、いつ得られるかはわかりません。しかし、目の前にある、たまたま得られた数個の卵子に、上記のように手を加えるよりは、生まれてくる子供に対して責任を持てる気がします。少し乱暴な言い方ですが、精子と出会わせるために卵巣内にあるすべての卵子を取り出す、というくらいのつもりで私は “Squeeze all” と呼んでいます。私の経験ですが、1年間採卵を続けて得られた受精卵を凍結保存して貯め、何回かの移植の末に出産された方がいます。

卵子はずっと私の研究テーマです。2016年に向けて少しでも妊娠率を上げられるように、年末年始、よく考えたいと思います。

それでは、皆さん、良いお年をお迎えください。

今年1年を振り返って

日も短くなり、寒さも増してきました。風邪や胃腸炎などがはやっているようですが、皆さんは大丈夫ですか?

先週あたりから、患者さんから帰り際に「先生、良いお年を」といわれるようになり、「もう2015年も終わりなんだな」と感じるようになりました。一日一日ベストを尽くすことを心がけて、それを積み重ねたら、あっという間に一年経ったという感じですね。さらに、今年は7月に父が急逝して喪中のため年賀状も書かず、なんとなく季節感がないまま年末を迎えました。

今年一年を振り返って、診療について言えば、理念を共有するスタッフと共に、良い医療を提供できたと思います。一人一人の患者さんと丁寧に向き合うことで妊娠率の向上につながるいくつかの新たな発見もありましたし、より安全で確実な胚凍結法もほぼ確立しました。体外受精周期の集大成ともいえる胚移植では、常に確実に子宮内の理想の位置に戻すことができました。そして何よりも、重大な副作用や合併症を起こすことなく、安全に治療を受けていただけました。

本当は診療以外にもいろいろな社会活動に取り組みたかったのですが、忙しさを理由に先送りになってしまいました。このブログも、外来が忙しくなって土曜日に開催していたセミナーが思うようにできなくなったため、通院中の患者さんや、不妊で悩む方々に向けてメッセージを発しようと思って始めましたが、振り返ってみると、ついつい間が空いてしまいました。

来年は、診療体制をより充実させて妊娠率の向上に努めると共に、待ち時間を減らす工夫や、電話に替えてメールサービスを導入するなど、皆さんのストレスが少しでも減るように努力したいと思います。

年末年始を前にして

12月に入りました。年内の治療周期もあと1周期となりました。

10月、11月は体外受精の採卵および胚移植が多かったため、外来診療(診察および相談)時間を十分に取れない日もあり、皆様にはご迷惑をおかけしました。しかし、この2カ月の胚移植当りの妊娠率は50%程度あり、質の高い治療が行えたと思います。

多くの方が、年内に妊娠判定を終えて、年末年始を迎えたいと思っていらっしゃることでしょう。できるだけご希望に沿うようにしていますが、あまりギリギリの日程を組むとベストな治療を行えないことがあるので、そのような場合は、余裕を持って、年内の移植、年明けの妊娠判定、あるいは、1月を待って治療をスタートするようにお勧めします。

年末年始には、いろいろな会や親戚の集まりなど、人と会う機会が増えます。妊娠、出産、育児の話題が出て、胸が苦しくなることがあるかもしれません。そんな時には、私たちスタッフのことを思い出してください。今年は間に合わなかったかも知れませんが、来年のこの時期に、また辛い思いをしなくて済むように出来る限りの努力をします。

次のステージへ

朝晩寒くなってきましたが、皆さん元気にお過ごしですか?前回の投稿からあっという間に2週間以上経ってしまいました。

去年開業した時の目標の一つに、「月に20人の方の採卵を安全に確実に行い、平均妊娠率30%を目指す」ことがありました。刺激周期では、OHSSなどの副作用に気をつけながら、最適な日に採卵を行い、複数の卵子や受精卵を培養し、予定した日に移植するため、医師、看護師、受付事務、培養士の全員がチームとして患者さんの状態を十分に把握しておく必要があります。この3ヶ月を振り返ると、月に約20人の方の採卵があり、副作用もなく目標妊娠率もほぼ達成できたと思います。

しかし、患者さんからは。「待ち時間が長い日がある」、「薬の説明が十分でない」、というような様々なご指摘もいただいています。ご指摘については、その都度スタッフで共有し、改善策を検討するようにしていますが、お気づきの点があれば、遠慮なく私またはスタッフに伝えていただくか、洗面台横の「ご意見箱」に投函してください。

今後は、現在の診療システムが、より満足していただけるものになるようスタッフ一同初心を忘れず努力します。そして、クリニックの次のステージとして、卵子提供、卵子の凍結保存、着床前スクリーニングなど社会的、倫理的に議論のある領域についても、これまでの国内外での経験を生かしながら、世の中のニーズに答えられるよう準備をしていきたいと考えています。

「わかりません」という言葉の重み

前々回、Marilyn Monk 教授のことを書きましたが、他にも大きな影響を受けた人が何人かいます。その中の一人は、私が医学生だった当時、東大の内科教授でした。その方とは病棟実習後の口頭試問で接しただけですが、頂いた一言にはインパクトがありました。

受け持った患者さんについてのプレゼンテーションに対する質問がいろいろとあるわけですが、私が「わかりません」というと、その教授は「わからないというのは、君が勉強不足で知らないの?、それとも世界中の誰もしらないの?」と言われました。

もちろん私の勉強不足なのですが、この一言には目を覚まされました。考えてみれば当たり前のことです。目の前の患者さんの命や人生がかかっているわけですから、私が最大限の努力をしなくて済むはずがありません。

その後今に至るまで、わからないことは徹底的に調べてからものをいうようにしています。調べる際には、Monk 教授から学んだ、論文を常に批判的に読む姿勢が役立っています。皆さんからの質問に、私が「わかりません」とか「答えがないと思います」とかいう時には、「わからない」という言葉の重みを感じた上での、誠実な答えであるとご理解ください。

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