横浜市神奈川区鶴屋町にある横浜駅近くの不妊治療専門施設

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横浜HARTクリニックの内観

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不妊治療の評価方法

朝晩冷えてきましたが、体調はいかがですか?

院内は、暑くも寒くもなく、今が一番調節し易い季節です。

さて、今回は「妊娠率」という表現についてお話しましょう。皆さんが一番知りたい「妊娠率」は、実は非常に曖昧な言葉です。

体外受精を例にとると、当院の実績のページでも示しているように、「周期あたりの妊娠率」や「患者さんあたりの妊娠率」がありますし、さらには新鮮胚移植と凍結胚移植を合わせた「採卵あたりの累積妊娠率」などもあります。

それぞれに評価しているものが異なるので、体外受精に限れば、患者さんにとって一番適切で、より真実を伝えられるものは、「患者さんあたりの妊娠率」だと思います。「周期あたりの妊娠率」や「採卵あたりの累積妊娠率」は、患者さんの背景や、クリニックの治療方針など様々な要因が加味されるので、クリニック間の比較には向きません。

体外受精に限らず、少し視点を変えた評価法として、「妊娠に至るまでの時間」(Time To Pregnancy; TTP) という表現もあります。例えば、タイミング性交と人工授精を比較して、文字通り「妊娠に至るまでの時間」を統計的に計算する方法です。不育症で悩む方には、同様に「出産に至るまでの時間」(Time to Live birth; TTLB)という評価法があり、着床前スクリーニング(PGS)の有効性を評価する際などに用いられています。

ご来院された際には、それぞれの治療法のいわゆる「妊娠率」をご説明していますが、どの表現も100% 客観的なものではないことを知っておいてください。

雑感

先日、「The End of Sex」(H. T. Greely 著、Harvard Univ. Press)という本を読みました。タイトルの通り、ヒトの生殖が近い将来、性交によってではなく、体外での受精によって行われるようになるという内容です。これは不妊治療をしている方に限りません。まず、夫婦の iPS 細胞を作り、そのiPS 細胞から卵子と精子を作って(体外)受精させ、できた受精卵を女性の子宮に戻します。不妊治療をされている女性にとっては採卵をせずに済むので、負担が減り良いことかもしれません。現行の採卵方法では、刺激周期でも1回の採卵で10個程度の卵子しか採取できませんが、iPS 細胞からは限りなく卵子を作成できるはずなので、着床能力のある受精卵が得られる可能性、すなわち妊娠の可能性が高まると書かれています。さらに、着床前診断/スクリーニング(PGD/PGS)を行えば、多くの受精卵の中から希望の性質を持つ受精卵を選ぶこともできます。確かに技術的にはこのようなことが可能な時期に来ていると思われますが、果たして20年後はどうなっているでしょうか?

実は、同じようなシナリオは Aldous Huxley の古典「Brave New World」に書かれています。こちらの本に書かれた世界では、人々は「通常」体外受精によって子供を作り、一部の「特別」な人たちが性交によって子供を産みます。そして人々はバーチャルな世界に娯楽を求め、五感による現実世界の娯楽はつまらないものとして描かれています。驚くべきことは、この本が80年以上も前、1932年に出版されたことです。

私自身は、生殖行為は自然(宗教を持つ方にとっては神?)の「壮大な実験」であり、必要以上に人の手を加えるべきではないと考えています。精子や卵子が作られる際には、両親から受け継いだ染色体ペアの間で遺伝子の組み換えが行われ(減数分裂、相同組み換え)、その結果できた1個1個の卵子、精子が持つ遺伝子は全て組み合わせが異なります。約30,000個の遺伝子があると言われていますから、その組み合わせはほぼ無限です。敢えて DNA の鎖を切るようなリスクを冒してまで遺伝子の組み換えを行う理由の一つは、やはり種としての多様性を生み出すことでしょう。様々な未知の環境、病気に耐える性質を持つ個体を生みだすことが種の保存につながります。ヒトが現時点で希望する性質を持つ子孫だけを残していくのは非常に危険です。何が有利で何が不利かは時代や社会環境によって異なります。理想は、「壮大な実験」の結果を全て「個性」として受け入れていけるように社会が意識し成熟することではないでしょうか。

タイミング性交と人工授精での妊娠

当院の主治療である体外受精での妊娠成績は、ホームページ「当院の実績」(現在2016年7月までを集計中)に詳細に記載していますが、タイミング性交および人工授精で妊娠された方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

開院から2016年7月末までに、タイミング指導で妊娠された方が44人、人工授精で妊娠された方が21人です。

タイミング指導を希望して来院される方の中には、妊娠を希望して間もない方から3年以上トライしている方、クリニックを訪れるのが初めての方から他院からの転院を希望される方、など様々です。タイミング指導が有効なパターンを2つ挙げると、(1)女性の年齢が低く、月経周期が長い方、(2)通水検査(卵管にお水を通す検査)である程度痛みを伴う方、があります。(1)は、多嚢胞性卵巣(症候群)をはじめとする排卵障害の方で、きちんと排卵を起こして、性交を持てれば解決します。(2)は卵管に軽い閉塞があって、通水検査でそれが解決したためと考えられます。もちろん、いずれの場合も男性側に原因がないことが前提です。

人工授精については、一般に言われているとおり、妊娠率はあまり高くありません。上のタイミング指導で述べたような原因(タイミング指導で妊娠しやすい要因がある)以外の方では、患者さんあたりの妊娠率は10-15%です。ただ、人工授精では、どなたが妊娠に至るか予測しにくいので、何回かトライして判断するしかありません。

タイミング指導や人工授精で妊娠された方の治療を振り返ることで、身体に備わった生殖という営みに新たな感動を覚えます。そして、その方々から学んだ所見、例えば AMH 値にこだわる必要はないとか、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、チョコレート嚢腫があってもそれがすべての原因ではないとか、そういう事実を体外受精治療を受けている方々へ活かしています。

AMHの測定方法が変わりました

暑い日が続いていますが、お元気にお過ごしですか?当院へ通院していただいている方々にはお礼申し上げます。

さて、表題のとおり、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定方法が変わりました。皆さん AMH の値はとても気になると思いますので、ご連絡、ご説明いたします。

当院は、AMH の測定を SRL という検査会社に依頼していますが、測定方法の変更に伴い、以下のような関係になるそうです。

(新測定値)= 0.852  x (旧測定値)-  0.230

例えば以前の方法で、2 ng/ml であった方は、新しい測定方法では、

0.852  x  2  –  0.230  =  1.474  (ng/ml)

と、3 割近く低い値になります。

いずれにしても、新測定方法ではこれまでの値よりも低くなりますので、以前にSRL で測定された数値と比較する場合には、注意が必要です。

今年の2月11日のブログにもAMH のことは書きました。数値に一喜一憂する必要はありませんが、こんな実地の情報も知っておかれると安心ですよね。

暑中お見舞い申し上げます

暑くなってきましたが、皆さん、いかがお過ごしですか?

私は、先週父の一周忌を終えました。直前のブログで開院2周年のことを書きましたが、父の死から1年という別の時間軸で振り返ってみると、見えなかったものが見えてくることもあり、人生というのは時間と空間が何重にも重なり合った深みのあるものなんだな、と改めて感じます。

さて、当院処置室の壁にある大きなコルクボードをご存知でしょうか?

お察しの方も多いと思いますが、出産報告と共に送っていただくことが多い赤ちゃんの写真を貼るために昨年末に設置したものです。院内に写真を貼ることに対しては、賛成、反対両意見があり、それぞれのクリニックが自分たちの判断で決めていますが、私は貼りたいと思っています。その理由は、以下の通りです。

私がこれまで関わってきた(東京、横浜HARTの)患者さんで写真を送ってくれる方の中に、「可愛いでしょう」という単なる自慢のために送ってくれる方はまずいません。殆どの方の文章から、「治療中はいろいろと辛いこともありましたが、ようやく出産までたどり着きました。子育てはまた不安でいっぱいですが、様々な方の応援で授かった命を責任を持って育てていきます」という決意が読み取れます。

不妊治療中は、妊娠中の方や子供連れの方を見かけると辛くなることも多いと思います。でも、誰の子供であっても、この世に生まれてきた子供の全てを愛しいと思っていただきたいし、少なくとも、同じ横浜HARTクリニックに通った仲間(同志)が送ってくれた写真の赤ちゃんの誕生を祝福してあげたいと思うのですが、私の驕りでしょうか?

クリニックの診療理念の7にある「社会貢献」。私たちが日々行う診療で力になれる方の数は微々たるものかもしれません。しかし、世界中で人の命が簡単に奪われてしまう時代に、生殖医療を通じて、一つ一つの命の尊さを皆さんと共有していきたいと思います。

いつから写真を掲示するかは未定ですが、ご意見があればぜひ院内設置の「ご意見箱」へ投書頂きますようお願いします。

開業から2年を迎えました

本日、7月7日で開業から満2年を迎えました。

偶然ですが、今日、カルテ番号1番の方(2年前の今日、開業日、に来院された方)が、二人目(凍結胚移植)の相談に来院されました。

2年は区切りではありますが、一人一人の患者さんと向き合うことを一日一日、365 x 2 = 730 日続けてきたら、2年という時間が経ったという感じです。今は、一日に20-30人(組)の患者さんを診察していますが、皆さんそれぞれに原因や背景が違い、また同じ患者さんでも、日によって求めるものが違います。それにどう応えていくか、いい意味での緊張の連続です。よく例えて言うのですが、一日の診療は、マラソンではなく、100メートルを全力で20-30回走るのに近いと思います。

スタッフにも常に、「患者さんから学ばせてもらう」ようにと指導しています。診療理念の一つである「患者さんに寄り添った」診療を実践できれば、患者さんは非常に多くのことを教えてくれます。その患者さんから学んだことを、他の患者さんに活かす。そして、それを繰り返すことで、より多くの患者さんを幸せにすることができ、スタッフ自身も成長する。生殖医療分野全体および社会一般に貢献できるように人材を教育することも、理念の一つなのですが、これは今後も継続課題です。

私は将来に保険をかける形の医療よりも、目の前の患者さんの悩みと向き合う形の医療により惹かれるので、卵子の凍結保存よりは、着床前検査、卵子の質の向上、卵子提供などに今後関わっていくと思います。倫理や子供の福祉を考えながら、社会のニーズに応じた不妊治療を提供していけるよう努力します。

良い卵子は作るべきか探すべきか?

体外受精にしても、タイミング性交にしても、妊娠するために重要なことは、いい卵子が精子と出会って受精することです。その際、いい卵子は作るべきなのか、探すべきなのか、という議論をすることができます。

目の前に得られた卵子が良くない場合、その卵子を良くすることが可能なら、体外受精を受ける方のは多くは、1回でうまくいくでしょう。卵子の質を改善する方法として、卵子の細胞質(ミトコンドリア)移植や核置換などが以前から提唱されていますが、科学的・医学的にはナイーブなレベルにとどまっています。iPS細胞から精子や卵子を作ることも可能になりつつありますが、体内で自然に作られる精子、卵子とまったく同じ性質のものであるかどうかはわかりません。

私自身の臨床と基礎研究の経験からみると、卵子という細胞は高度に分化していて、その働きは神秘的としか言いようがないくらいに巧妙で複雑です。受精後に一人の人間を作り上げるプログラムが、単純な人工的操作で改善できるとはとても思えません。

私が医学生から研修医の頃(1990年前半)には、遺伝子治療が注目されていて、私も非常に興味を持って勉強したことがあります。その際のガイドラインとして、遺伝子治療は体細胞(その人、一世代で終わる細胞)に限って行い、精子と卵子、つまり次の世代につながる生殖細胞には遺伝子を導入してはいけない、という常識がありました。したがって、上に書いたような、卵子を操作することには違和感があります。

さらに、体外受精がなかなかうまくいかない方々が、ようやくいい胚盤胞ができ、妊娠、出産に至るという経験を重ねると、「良い卵子は良いのだ」という当たり前なことに改めて感動を覚えます。次の世代を担う子供たちに対する責任を考えると、現時点では、不確かな点の多い卵子の質改善法よりは、良い卵子が得られるまで根気よく待つ方を選択したいと思います。

染色体が正常な受精卵の割合

体外受精・胚移植で、見た目はきれいな受精卵なのに、なかなか着床しない方はたくさんいらっしゃいます。すると、いつも「受精卵の問題なのか」あるいは「子宮の問題なのか」ということになります。

私は、よほど大きな子宮の問題がなければ、大半は「受精卵の問題」と考えています。日本では受精卵の着床前スクリーニング(PGS、最近は着床前検査、preimplantation genetic testing; PGTともいいます)が公式には認められていないので、どうしても海外のデータに頼ることになりますが、コンセンサスとしては以下の通りです。

胚盤胞まで育った受精卵の染色体(22対の常染色体とXY性染色体すべて)を調べてみると、正常な受精卵の割合は、女性年齢が30代前半で60%、30代後半で30-40%、40代になると20%以下です。この割合は5日目の胚盤胞でも、6日目の胚盤胞でも同じです。

さらに、染色体正常な胚盤胞を一旦凍結後、別周期に移植した場合の着床率は年齢に関わらず50-60%程度です。この理由は、染色体以外にも受精卵の力を左右する様々な条件(たとえば、ミトコンドリア)があるからです。

これらのデータから、1個ずつ胚盤胞を移植した場合の移植当りの妊娠率(= 着床率)は、女性年齢が30代前半で35%、30代後半で25%、40代では10%程度、ということになります。すなわち、30代前半では3個、30代後半では4個、40代では10個くらい移植する必要があるということです。もちろん最初に移植する胚で妊娠する方も多くいらっしゃいますが、もしうまくいかなかったとしても、あまり悲観的にならず、このくらいの個数移植する必要があるんだ、と考えてください。

よい受精卵を得ること、場合によっては凍結保存して貯めることが最大の目標です。採卵数の多い方少ない方、年齢の高い方低い方、流産経験のある方ない方など、皆さんの背景も異なりますから、どのような治療方針が良いかは十分に相談して決めるようにしています。

黄体補充のプロゲステロン腟剤について

今年1月27日のブログに凍結胚移植の際に使用するホルモン剤について書きました。値段が比較的高いので、類似品が国内認可販売されたら比較検討する旨お話ししました。

プロゲステロン腟剤については、当院では「ルティナス」を使ってきました。最近、同様の腟剤として、「ウトロゲスタン」と「ルテウム」という商品が認可販売されました。3商品とも海外では以前から使用されています。「ルティナス」はアプリケーターが付属されている扁平な錠剤、「ウトロゲスタン」はラグビーボールのような形の錠剤、「ルテウム」は長細い薬剤と、それぞれに特徴はありますが効果に差はありません。

一番気にしていた価格については、いわゆる横並びでしょうか、1日分の費用にすると結局、3商品ともほぼ同じでした。

これまで通り、「ルティナス」を中心に使用していく予定ですが、アプリケーターがうまく使えない方には「ウトロゲスタン」も考慮したいと思います。また、いずれの薬剤にしても、費用の負担が大きいことは確かなので、薬剤を使わずに済む排卵周期の凍結胚移植も積極的に考えるようにしています。

当院へ転院をお考えの方へ

当院では、タイミングから体外受精の方まで幅広く通院していただいていますが、次第に体外受精治療の方の割合が増えてきました。「体外受精を中心とした高度な不妊治療」を提供するために開院しましたので、クリニックとしての進歩だと思っています。

体外受精をご希望の方で、他のクリニックで上手くいかなかったという方も増えています。治療内容について細かなデータをお持ちでない方もいらっしゃいますが、できるだけ多くの情報をお聞きして、「どうして上手くいかなかったのか?」と考えることから、「その方にとっては何がベストなのか?」を導きだすようにしています。上手くいかなかった理由として、代表的なものが4つあります。

(1)低刺激周期を何回かトライしたがうまくいかなかった

卵巣予備能力のある方(AMHの数値が低くない方)には、刺激周期での採卵を行います。採卵数を増やすだけでなく、ご自身のホルモンバランスでは卵胞の発育が不十分なために卵子の本来の力を引き出せていない場合がありますので、卵巣刺激をすること自体に治療効果があります。特に、30代後半の方には効果が大きいです。

(2)凍結胚移植を何回かトライしたがうまくいかなかった

現在、胚凍結は胚盤胞に育ってから行う施設が大半ですから、胚の発育は良いということです。その後の凍結胚移植で結果が出ないのは、凍結・融解技術に問題があるか、胚盤胞には育っていても培養環境に問題があり凍結前の胚の質が低下しているか、などが考えられます。培養環境には相性もありますので、他のクリニック(当院に限らず)でトライしてみることもいいでしょう。

(3)年齢が高くAMHも低い

以前のブログでも書きましたが、AMHは卵子の「数」の指標であって「質」の指標ではありません。「質」の指標になるのは女性の年齢です。したがって、「年齢が高くAMHが低い」ということは「卵子の質が低下していて数も少ない」という難しい状況です。しかし、AMHの値にかかわらず、本来女性の年齢と共に良い卵子が育つ周期が減ってきますから(半年に1回とか、1年に1回とか)、どのような治療であっても1回で結果が出る率はかなり低くなります。ですから、ご自身の排卵周期が正常であれば、採卵とタイミング性交を組み合わせるなどして、1年または44歳になるまでを目途にトライしてみるとよいでしょう。

(4)重度の男性因子のために胚盤胞ができない

この場合、良い精子を採取できるかどうかにかかっています。射精された精液中に良い精子が見つからない場合は、手術によって精巣から直接精子を採取する方法(testicular sperm extraction; TESE)があります。また、以前にTESEで採取した精子で上手くいかないのであれば、別の施設で再度TESEをトライしてみることも一法です。

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