横浜市神奈川区鶴屋町にある横浜駅近くの不妊治療専門施設

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横浜HARTクリニックの内観

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顕微授精で生まれた男性の精液所見

HARTグループでは、月に1回、広島HARTクリニック、東京HARTクリニック、横浜HARTクリニック、神奈川ARTクリニックの4施設合同でTVカンファレンスを行い、論文の抄読や情報の交換をしています。

今月は、神奈川ARTクリニックの田島先生に、顕微授精(ICSI)で生まれた男性の精液所見についての論文(”Semen quality of young adult ICSI offspring: the first results, Human Reproduction, doi:10.1093/humrep/dew245)を読んでもらいました。

1992年から1996年に ICSI によって生まれた18-22歳の男性の精液所見についての論文です。詳細は、次号のHART Newsletter に掲載予定ですが、結果だけ記すと、ICSI によって生まれた男性 54 名の精液濃度の中央値は1770万/ml で、対象群の3700万/ml よりも有意に低かったというものです。運動率(55.0% vs. 56.0%)、精液量(2.2ml vs. 2.6ml)については差がありませんでした。息子の精液所見が、父親よりもさらに悪くなることもありませんでした。ICSI が行われた理由の 92.5% は男性因子です。

このような論文が出ると皆さん不安になられると思います。しかし、論文の著者グループは世界で最初に ICSI を行ったグループで、これまでずっと ICSI で生まれた子供たちをフォローアップしてきました。今回、ようやく成人になり、精液所見のデータを得られる時期になったのです。自らの治療に対して、ここまできちんと責任を持つことにまず敬意を表します。

今回の調査では、215 家族に連絡を取ろうとしたのですが、149 家族にしか連絡が取れず、そのうちの 56 人から同意が得られました。うち 2人 は精液採取ができなかったため、最終的に54人のデータとなりました。ICSI によって生まれたことを子供に話していない家庭や、精液検査自体受けたくない等、参加を希望しない理由は様々です。

この論文の結果が世界中の全ての ICSI 児にあてはまるかどうかはわかりません。遺伝的な体質だけではなく、それぞれの家庭生活習慣なども大きく影響すると考えられます。今後報告されると思われる多くのデータを待ちたいと思います。

大事なことは、特に不妊治療では、目の前のご夫婦だけではなく、あるいはそれ以上に生まれてくる子供たちが幸せになれるよう、私たち医療従事者は自分が行う治療に責任を持つことです。全ての結果を予測することはできませんが、常にベストと思われる方法を考え、精子、卵子、胚を愛護的に扱って、女性が安全に妊娠、出産できるよう、予定した治療を確実に実行することを日々心がけています。

アンケート調査にご協力ください

皆さん、お元気ですか?

タイトルの通り、開院以来初めてアンケート調査を実施することにしました。本当は、もっと早くに実施したかったのですが、なかなか手が回らず今になってしまいました。

開業時からのコンサルト会社である日本医業総研の協力を得てアンケート用紙を作成してもらいました。回答用紙には、皆さんの満足度だけでなく、クリニックの点数評価、自由記述もありますので、ぜひ率直なご意見をお聞かせ下さい。2016年11月7日から配布し、ご来院の方全員、先着で300名の方にお渡しします。日本医業総研宛ての返送用封筒も一緒にお渡しします。

私たちスタッフが良かれと思ってしていることが、皆さんからみると実は不満足なこともあるかも知れません。また、私たちが気付かずにご迷惑をおかけしてることもあることでしょう。クリニックが皆さんにとって、より身近で通いやすい「場」、「空間」になるようスタッフ一同一層努力したいと思っていますので、ご協力の程お願い申し上げます。

凍結胚移植周期の卵胞ホルモン剤について

凍結胚移植をホルモン補充周期で行う際に使用するホルモン剤については、以前にもブログに書きました(「凍結胚移植周期のホルモン剤について」、2016年1月27日)。

できるだけ日本国内で認可・販売されている薬剤を使用するように努めていますが、これまで使用してきた卵胞ホルモン(エストロゲン)、ジュリナ、は 1 錠に含まれるホルモン量が少ないため、どうしても錠数が多くなってしまいます。そのため、費用の負担だけでなく、多くの薬を服用するという「心理的な負担」も大きくなり、皆さんに対して心苦しく思うようになりました。

従って、卵胞ホルモンに限って、以前使用していた製剤、プロギノーバ、を再度海外から輸入して使用することにしました。プロギノーバ 1 錠には、ジュリナ 1 錠の4倍量の卵胞ホルモンが含まれていますので、服用錠数は 4分の1 で済みます。さらに内膜が厚くなりにくい方には、同じ錠剤を腟に入れていただくこともあるのですが、その際にもより有効と思われます。

新鮮胚移植後のホルモン補充については、短期間なため、現行通りジュリナを処方させていただきます。

腟剤については、国内販売されているものはどれも海外製品と同一なため、凍結胚移植、新鮮胚移植共に現行通りとさせていただきます。

不明な点があれば、遠慮なく医師(後藤)にお尋ねください。

不妊治療の評価方法

朝晩冷えてきましたが、体調はいかがですか?

院内は、暑くも寒くもなく、今が一番調節し易い季節です。

さて、今回は「妊娠率」という表現についてお話しましょう。皆さんが一番知りたい「妊娠率」は、実は非常に曖昧な言葉です。

体外受精を例にとると、当院の実績のページでも示しているように、「周期あたりの妊娠率」や「患者さんあたりの妊娠率」がありますし、さらには新鮮胚移植と凍結胚移植を合わせた「採卵あたりの累積妊娠率」などもあります。

それぞれに評価しているものが異なるので、体外受精に限れば、患者さんにとって一番適切で、より真実を伝えられるものは、「患者さんあたりの妊娠率」だと思います。「周期あたりの妊娠率」や「採卵あたりの累積妊娠率」は、患者さんの背景や、クリニックの治療方針など様々な要因が加味されるので、クリニック間の比較には向きません。

体外受精に限らず、少し視点を変えた評価法として、「妊娠に至るまでの時間」(Time To Pregnancy; TTP) という表現もあります。例えば、タイミング性交と人工授精を比較して、文字通り「妊娠に至るまでの時間」を統計的に計算する方法です。不育症で悩む方には、同様に「出産に至るまでの時間」(Time to Live birth; TTLB)という評価法があり、着床前スクリーニング(PGS)の有効性を評価する際などに用いられています。

ご来院された際には、それぞれの治療法のいわゆる「妊娠率」をご説明していますが、どの表現も100% 客観的なものではないことを知っておいてください。

雑感

先日、「The End of Sex」(H. T. Greely 著、Harvard Univ. Press)という本を読みました。タイトルの通り、ヒトの生殖が近い将来、性交によってではなく、体外での受精によって行われるようになるという内容です。これは不妊治療をしている方に限りません。まず、夫婦の iPS 細胞を作り、そのiPS 細胞から卵子と精子を作って(体外)受精させ、できた受精卵を女性の子宮に戻します。不妊治療をされている女性にとっては採卵をせずに済むので、負担が減り良いことかもしれません。現行の採卵方法では、刺激周期でも1回の採卵で10個程度の卵子しか採取できませんが、iPS 細胞からは限りなく卵子を作成できるはずなので、着床能力のある受精卵が得られる可能性、すなわち妊娠の可能性が高まると書かれています。さらに、着床前診断/スクリーニング(PGD/PGS)を行えば、多くの受精卵の中から希望の性質を持つ受精卵を選ぶこともできます。確かに技術的にはこのようなことが可能な時期に来ていると思われますが、果たして20年後はどうなっているでしょうか?

実は、同じようなシナリオは Aldous Huxley の古典「Brave New World」に書かれています。こちらの本に書かれた世界では、人々は「通常」体外受精によって子供を作り、一部の「特別」な人たちが性交によって子供を産みます。そして人々はバーチャルな世界に娯楽を求め、五感による現実世界の娯楽はつまらないものとして描かれています。驚くべきことは、この本が80年以上も前、1932年に出版されたことです。

私自身は、生殖行為は自然(宗教を持つ方にとっては神?)の「壮大な実験」であり、必要以上に人の手を加えるべきではないと考えています。精子や卵子が作られる際には、両親から受け継いだ染色体ペアの間で遺伝子の組み換えが行われ(減数分裂、相同組み換え)、その結果できた1個1個の卵子、精子が持つ遺伝子は全て組み合わせが異なります。約30,000個の遺伝子があると言われていますから、その組み合わせはほぼ無限です。敢えて DNA の鎖を切るようなリスクを冒してまで遺伝子の組み換えを行う理由の一つは、やはり種としての多様性を生み出すことでしょう。様々な未知の環境、病気に耐える性質を持つ個体を生みだすことが種の保存につながります。ヒトが現時点で希望する性質を持つ子孫だけを残していくのは非常に危険です。何が有利で何が不利かは時代や社会環境によって異なります。理想は、「壮大な実験」の結果を全て「個性」として受け入れていけるように社会が意識し成熟することではないでしょうか。

タイミング性交と人工授精での妊娠

当院の主治療である体外受精での妊娠成績は、ホームページ「当院の実績」(現在2016年7月までを集計中)に詳細に記載していますが、タイミング性交および人工授精で妊娠された方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

開院から2016年7月末までに、タイミング指導で妊娠された方が44人、人工授精で妊娠された方が21人です。

タイミング指導を希望して来院される方の中には、妊娠を希望して間もない方から3年以上トライしている方、クリニックを訪れるのが初めての方から他院からの転院を希望される方、など様々です。タイミング指導が有効なパターンを2つ挙げると、(1)女性の年齢が低く、月経周期が長い方、(2)通水検査(卵管にお水を通す検査)である程度痛みを伴う方、があります。(1)は、多嚢胞性卵巣(症候群)をはじめとする排卵障害の方で、きちんと排卵を起こして、性交を持てれば解決します。(2)は卵管に軽い閉塞があって、通水検査でそれが解決したためと考えられます。もちろん、いずれの場合も男性側に原因がないことが前提です。

人工授精については、一般に言われているとおり、妊娠率はあまり高くありません。上のタイミング指導で述べたような原因(タイミング指導で妊娠しやすい要因がある)以外の方では、患者さんあたりの妊娠率は10-15%です。ただ、人工授精では、どなたが妊娠に至るか予測しにくいので、何回かトライして判断するしかありません。

タイミング指導や人工授精で妊娠された方の治療を振り返ることで、身体に備わった生殖という営みに新たな感動を覚えます。そして、その方々から学んだ所見、例えば AMH 値にこだわる必要はないとか、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、チョコレート嚢腫があってもそれがすべての原因ではないとか、そういう事実を体外受精治療を受けている方々へ活かしています。

AMHの測定方法が変わりました

暑い日が続いていますが、お元気にお過ごしですか?当院へ通院していただいている方々にはお礼申し上げます。

さて、表題のとおり、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定方法が変わりました。皆さん AMH の値はとても気になると思いますので、ご連絡、ご説明いたします。

当院は、AMH の測定を SRL という検査会社に依頼していますが、測定方法の変更に伴い、以下のような関係になるそうです。

(新測定値)= 0.852  x (旧測定値)-  0.230

例えば以前の方法で、2 ng/ml であった方は、新しい測定方法では、

0.852  x  2  –  0.230  =  1.474  (ng/ml)

と、3 割近く低い値になります。

いずれにしても、新測定方法ではこれまでの値よりも低くなりますので、以前にSRL で測定された数値と比較する場合には、注意が必要です。

今年の2月11日のブログにもAMH のことは書きました。数値に一喜一憂する必要はありませんが、こんな実地の情報も知っておかれると安心ですよね。

暑中お見舞い申し上げます

暑くなってきましたが、皆さん、いかがお過ごしですか?

私は、先週父の一周忌を終えました。直前のブログで開院2周年のことを書きましたが、父の死から1年という別の時間軸で振り返ってみると、見えなかったものが見えてくることもあり、人生というのは時間と空間が何重にも重なり合った深みのあるものなんだな、と改めて感じます。

さて、当院処置室の壁にある大きなコルクボードをご存知でしょうか?

お察しの方も多いと思いますが、出産報告と共に送っていただくことが多い赤ちゃんの写真を貼るために昨年末に設置したものです。院内に写真を貼ることに対しては、賛成、反対両意見があり、それぞれのクリニックが自分たちの判断で決めていますが、私は貼りたいと思っています。その理由は、以下の通りです。

私がこれまで関わってきた(東京、横浜HARTの)患者さんで写真を送ってくれる方の中に、「可愛いでしょう」という単なる自慢のために送ってくれる方はまずいません。殆どの方の文章から、「治療中はいろいろと辛いこともありましたが、ようやく出産までたどり着きました。子育てはまた不安でいっぱいですが、様々な方の応援で授かった命を責任を持って育てていきます」という決意が読み取れます。

不妊治療中は、妊娠中の方や子供連れの方を見かけると辛くなることも多いと思います。でも、誰の子供であっても、この世に生まれてきた子供の全てを愛しいと思っていただきたいし、少なくとも、同じ横浜HARTクリニックに通った仲間(同志)が送ってくれた写真の赤ちゃんの誕生を祝福してあげたいと思うのですが、私の驕りでしょうか?

クリニックの診療理念の7にある「社会貢献」。私たちが日々行う診療で力になれる方の数は微々たるものかもしれません。しかし、世界中で人の命が簡単に奪われてしまう時代に、生殖医療を通じて、一つ一つの命の尊さを皆さんと共有していきたいと思います。

いつから写真を掲示するかは未定ですが、ご意見があればぜひ院内設置の「ご意見箱」へ投書頂きますようお願いします。

開業から2年を迎えました

本日、7月7日で開業から満2年を迎えました。

偶然ですが、今日、カルテ番号1番の方(2年前の今日、開業日、に来院された方)が、二人目(凍結胚移植)の相談に来院されました。

2年は区切りではありますが、一人一人の患者さんと向き合うことを一日一日、365 x 2 = 730 日続けてきたら、2年という時間が経ったという感じです。今は、一日に20-30人(組)の患者さんを診察していますが、皆さんそれぞれに原因や背景が違い、また同じ患者さんでも、日によって求めるものが違います。それにどう応えていくか、いい意味での緊張の連続です。よく例えて言うのですが、一日の診療は、マラソンではなく、100メートルを全力で20-30回走るのに近いと思います。

スタッフにも常に、「患者さんから学ばせてもらう」ようにと指導しています。診療理念の一つである「患者さんに寄り添った」診療を実践できれば、患者さんは非常に多くのことを教えてくれます。その患者さんから学んだことを、他の患者さんに活かす。そして、それを繰り返すことで、より多くの患者さんを幸せにすることができ、スタッフ自身も成長する。生殖医療分野全体および社会一般に貢献できるように人材を教育することも、理念の一つなのですが、これは今後も継続課題です。

私は将来に保険をかける形の医療よりも、目の前の患者さんの悩みと向き合う形の医療により惹かれるので、卵子の凍結保存よりは、着床前検査、卵子の質の向上、卵子提供などに今後関わっていくと思います。倫理や子供の福祉を考えながら、社会のニーズに応じた不妊治療を提供していけるよう努力します。

良い卵子は作るべきか探すべきか?

体外受精にしても、タイミング性交にしても、妊娠するために重要なことは、いい卵子が精子と出会って受精することです。その際、いい卵子は作るべきなのか、探すべきなのか、という議論をすることができます。

目の前に得られた卵子が良くない場合、その卵子を良くすることが可能なら、体外受精を受ける方のは多くは、1回でうまくいくでしょう。卵子の質を改善する方法として、卵子の細胞質(ミトコンドリア)移植や核置換などが以前から提唱されていますが、科学的・医学的にはナイーブなレベルにとどまっています。iPS細胞から精子や卵子を作ることも可能になりつつありますが、体内で自然に作られる精子、卵子とまったく同じ性質のものであるかどうかはわかりません。

私自身の臨床と基礎研究の経験からみると、卵子という細胞は高度に分化していて、その働きは神秘的としか言いようがないくらいに巧妙で複雑です。受精後に一人の人間を作り上げるプログラムが、単純な人工的操作で改善できるとはとても思えません。

私が医学生から研修医の頃(1990年前半)には、遺伝子治療が注目されていて、私も非常に興味を持って勉強したことがあります。その際のガイドラインとして、遺伝子治療は体細胞(その人、一世代で終わる細胞)に限って行い、精子と卵子、つまり次の世代につながる生殖細胞には遺伝子を導入してはいけない、という常識がありました。したがって、上に書いたような、卵子を操作することには違和感があります。

さらに、体外受精がなかなかうまくいかない方々が、ようやくいい胚盤胞ができ、妊娠、出産に至るという経験を重ねると、「良い卵子は良いのだ」という当たり前なことに改めて感動を覚えます。次の世代を担う子供たちに対する責任を考えると、現時点では、不確かな点の多い卵子の質改善法よりは、良い卵子が得られるまで根気よく待つ方を選択したいと思います。

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