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「預けた凍結卵子 悩んだ2人目」

こんにちは。朝晩だいぶ涼しくなりましたが皆さん変わりありませんか?

10月28日付朝日新聞の声欄に、「預けた凍結卵子 悩んだ2人目」という題の投稿がありました。1人目を体外受精で出産した後、4年経って凍結中の受精卵を移植するかどうか、身体的、精神的、経済的な面で悩んだ末に移植し、2人目を出産した方の投稿です。2人目を出産して良かったとありますが、最後に「あの時、人為的に取り出した二つの命の源が、4年間のタイムラグを経て再開したのだと思うと、不妊治療って不思議だと思う」と締めくくられています。

率直な感想だと思います。凍結技術が進歩したおかげで、多胎妊娠を避けるために、移植する受精卵の数は通常1個、残りの良い受精卵は凍結保存することが一般的です。したがって、1度の移植で受精卵を2個、3個戻していた時代には双子の兄弟として生まれていたのが、受精した時は同じなのに何歳かの年齢差のある兄弟として生まれるようになりました。

もう少し複雑な場合として、何回か採卵をして凍結受精卵が複数ある場合に、後の採卵で得られた凍結受精卵から移植すると、出産の順序が受精の順序と逆になり、自然では起こり得ないことが起きることになります。

また、投稿の方のように、凍結保存した受精卵があるから2人目を産むかどうか悩んだ、もし凍結受精卵がなかったら2人目を考えなかったかも知れない方は多いかもしれません。受精卵の全てが出産に至るわけではなく、凍結中の受精卵にあまり思いを寄せる必要はないのですが、お腹に戻せばヒトとして生まれてくるかも知れない凍結受精卵を捨ててくださいと言うことは苦しいでしょう。

医療スタッフは、不妊で悩む目の前のご夫婦が何を望み、どういう結果がそのご夫婦にも生まれてくる子供にも一番幸せなのかを、治療の早期から考えていかなければいけません。必ずしも妊娠出産がゴールではありません。受精卵凍結に限らず、自然では起こり得ない治療技術・方法を用いる場合には、ご夫婦や子供に精神的な負担を残さないよう、医学的、社会的、倫理的な面にも配慮して、その治療法のメリット、デメリットについて十分な理解を得た上で治療を進めていくべきでしょう。

記事監修
院長 後藤 哲也
経歴

東京大学医学部卒業

産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)

アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設

イギリスロンドン大学大学院  医学博士(生殖遺伝学)

オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設

東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業

資格

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医

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