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当院では、タイミングから体外受精の方まで幅広く通院していただいていますが、次第に体外受精治療の方の割合が増えてきました。「体外受精を中心とした高度な不妊治療」を提供するために開院しましたので、クリニックとしての進歩だと思っています。
体外受精をご希望の方で、他のクリニックで上手くいかなかったという方も増えています。治療内容について細かなデータをお持ちでない方もいらっしゃいますが、できるだけ多くの情報をお聞きして、「どうして上手くいかなかったのか?」と考えることから、「その方にとっては何がベストなのか?」を導きだすようにしています。上手くいかなかった理由として、代表的なものが4つあります。
(1)低刺激周期を何回かトライしたがうまくいかなかった
卵巣予備能力のある方(AMHの数値が低くない方)には、刺激周期での採卵を行います。採卵数を増やすだけでなく、ご自身のホルモンバランスでは卵胞の発育が不十分なために卵子の本来の力を引き出せていない場合がありますので、卵巣刺激をすること自体に治療効果があります。特に、30代後半の方には効果が大きいです。
(2)凍結胚移植を何回かトライしたがうまくいかなかった
現在、胚凍結は胚盤胞に育ってから行う施設が大半ですから、胚の発育は良いということです。その後の凍結胚移植で結果が出ないのは、凍結・融解技術に問題があるか、胚盤胞には育っていても培養環境に問題があり凍結前の胚の質が低下しているか、などが考えられます。培養環境には相性もありますので、他のクリニック(当院に限らず)でトライしてみることもいいでしょう。
(3)年齢が高くAMHも低い
以前のブログでも書きましたが、AMHは卵子の「数」の指標であって「質」の指標ではありません。「質」の指標になるのは女性の年齢です。したがって、「年齢が高くAMHが低い」ということは「卵子の質が低下していて数も少ない」という難しい状況です。しかし、AMHの値にかかわらず、本来女性の年齢と共に良い卵子が育つ周期が減ってきますから(半年に1回とか、1年に1回とか)、どのような治療であっても1回で結果が出る率はかなり低くなります。ですから、ご自身の排卵周期が正常であれば、採卵とタイミング性交を組み合わせるなどして、1年または44歳になるまでを目途にトライしてみるとよいでしょう。
(4)重度の男性因子のために胚盤胞ができない
この場合、良い精子を採取できるかどうかにかかっています。射精された精液中に良い精子が見つからない場合は、手術によって精巣から直接精子を採取する方法(testicular sperm extraction; TESE)があります。また、以前にTESEで採取した精子で上手くいかないのであれば、別の施設で再度TESEをトライしてみることも一法です。
東京大学医学部卒業
産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)
アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設
イギリスロンドン大学大学院 医学博士(生殖遺伝学)
オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設
東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医