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ロンドンでの大学院生活

アメリカで着床前診断の仕事をした後(前々回参照)、日本へは戻らずにロンドンの大学院に入学しました。自分で手紙を書いて、Marilyn Monk教授の研究室に入れてもらいました。意外と知られていませんが、Marilynは世界で最初に、蛋白質およびDNAレベルで着床前診断が可能であることを示した研究者です。

Marilyn のもとでは、着床前診断から離れて、彼女の主な研究分野であるepigenetics、特に精子、卵子、受精卵のDNAのメチル化とX染色体の不活性化に関する基礎研究を行いました。彼女とは学位取得後も含めて、5年半ほど仕事をし、何本かの論文も書きましたが、それ以上に、彼女からは仕事に対する姿勢について多くを学びました。

何をしろという指示をもらったことはほとんどなく、自分で過去の論文を読み漁って研究題材や実験手順を決め、都度進捗状況を報告に行くスタイルでした。しかし、Marilynはたいていの論文は読んでいて、それも細部にわたって丁寧に読み、それぞれの論文について必ずいくつかの弱点を拾い出していました。その上で、私のデータを見て、丁寧に厳しく指導してくれました。

Marilynは研究者として顔が広く、私が行き詰まると、「○○に聞いてみたら?」と言ってよく連絡先を教えてくれました。Marilynの大学院生だと伝えると皆親切にアドバイスをくれたり、装置を使わせてくれたり、大変ありがたく思いました。放任主義ではありましたが、常に真実を求めて不正を許さず、レポートや論文の下書きには真っ赤になるほど添削を入れてくれ、自分のために割いてくれた時間に感謝したものです。

このロンドンでの大学院生活以来、私も常に論文を批判的に読み、本当に正しいと確信できるものだけを取り入れる癖がつきました。不妊症領域では、患者さんの背景が一様でなかったり、母集団が小さかったりで、結果が正しいのかどうかわからない論文が多く、そういうものは「参考として、結論は保留」と判断しています。したがって、安全性に問題がないと思われる内容であれば、患者さんに「こういう方法が報告されていますが、試してみますか?」というように相談して、自分でデータをとり、有効かどうか結論するようにしています。

大学院生活から20年近く経ち、Marilynも80歳を過ぎましたが、今でも時々「この論文は読んだか?、あの論文はおかしい」「このアイデアをどう思う?」とメールをくれます。なぜ、どこの馬の骨とも分からない私を研究室に受け入れてくれ、親身になって指導し、今でも気にかけてくれるのか分かりませんが、私にとっては人生の恩人の一人です。

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