治療のストレスを少しでも減らしたい
- 2016年2月28日
- 院長
患者さんから、胚移植後から妊娠判定採血までの約10日間を、「試験の合格発表を待つような、落ち着かない、長い日々です」と言われることがよくあります。
実際に、不妊治療 1 周期の中で、この妊娠結果がわかるまでの約10日間に最もストレスがかかるというデータがあります。採卵までの、注射をしたり、超音波検査に通ったり、という自分で何かをする(できる)主体的な時期に比べて、移植後妊娠判定日までは待つことが主な受身の時期になりますから、10日間という日数は非常にもどかしく感じられます。いつも勉強、仕事、家庭において、自分が努力することで満足できる結果を手に入れてきた頑張り屋さんタイプの方が多いので、特にこのもどかしさはつらいと思います。
この落ち着かない時期のストレスを少しでも減らすために、私たちクリニックスタッフにできることは、当たり前ですがその治療周期に最善を尽くすことです。生理開始直後の超音波診察に始まり、卵巣刺激方法の選択、注射の種類・量の決定、診察日の調整、採卵日の決定、子宮内膜の状態や卵胞数を考慮して移植日を決定、新鮮胚移植を行うか、全胚凍結にするか、などきめ細かく治療していくと、その方々、また同じ方でも生理周期による微妙な違いが見えてきます。その細部にこだわることで治療結果に差も生まれます。特に、他の施設で結果が出ずに当院へ来られ、比較的すんなりと結果が出る方の中には、こういうきめの細かさが大切な方がいます。
「この治療周期には、自分もスタッフも最善が尽くせた」と思えれば、「あとは結果を待つしかない」と、思いつめた気持ちから少し解放されるのではないでしょうか?不妊治療には、良い卵子と精子が出会えたかどうか、というどうしても確率的な部分がありますので、全てをコントロールするわけにはいきません。
先日ある受験予備校の広告に、「この塾に通えば、先輩たちと同じように合格できると信じて頑張りました」とありました。不妊治療クリニックも同様かもしれません。具体的な数字に表された実績と、「このクリニックに通えば妊娠できそうな気がする、このクリニックなら通えそうな気がする」という信頼関係が、よい結果と辛くない治療経験につながるのだと思います。