凍結胚移植をホルモン補充周期で行う際に使用するホルモン剤については、以前にもブログに書きました(「凍結胚移植周期のホルモン剤について」、2016年1月27日)。
できるだけ日本国内で認可・販売されている薬剤を使用するように努めていますが、これまで使用してきた卵胞ホルモン(エストロゲン)、ジュリナ、は 1 錠に含まれるホルモン量が少ないため、どうしても錠数が多くなってしまいます。そのため、費用の負担だけでなく、多くの薬を服用するという「心理的な負担」も大きくなり、皆さんに対して心苦しく思うようになりました。
従って、卵胞ホルモンに限って、以前使用していた製剤、プロギノーバ、を再度海外から輸入して使用することにしました。プロギノーバ 1 錠には、ジュリナ 1 錠の4倍量の卵胞ホルモンが含まれていますので、服用錠数は 4分の1 で済みます。さらに内膜が厚くなりにくい方には、同じ錠剤を腟に入れていただくこともあるのですが、その際にもより有効と思われます。
新鮮胚移植後のホルモン補充については、短期間なため、現行通りジュリナを処方させていただきます。
腟剤については、国内販売されているものはどれも海外製品と同一なため、凍結胚移植、新鮮胚移植共に現行通りとさせていただきます。
不明な点があれば、遠慮なく医師(後藤)にお尋ねください。
朝晩冷えてきましたが、体調はいかがですか?
院内は、暑くも寒くもなく、今が一番調節し易い季節です。
さて、今回は「妊娠率」という表現についてお話しましょう。皆さんが一番知りたい「妊娠率」は、実は非常に曖昧な言葉です。
体外受精を例にとると、当院の実績のページでも示しているように、「周期あたりの妊娠率」や「患者さんあたりの妊娠率」がありますし、さらには新鮮胚移植と凍結胚移植を合わせた「採卵あたりの累積妊娠率」などもあります。
それぞれに評価しているものが異なるので、体外受精に限れば、患者さんにとって一番適切で、より真実を伝えられるものは、「患者さんあたりの妊娠率」だと思います。「周期あたりの妊娠率」や「採卵あたりの累積妊娠率」は、患者さんの背景や、クリニックの治療方針など様々な要因が加味されるので、クリニック間の比較には向きません。
体外受精に限らず、少し視点を変えた評価法として、「妊娠に至るまでの時間」(Time To Pregnancy; TTP) という表現もあります。例えば、タイミング性交と人工授精を比較して、文字通り「妊娠に至るまでの時間」を統計的に計算する方法です。不育症で悩む方には、同様に「出産に至るまでの時間」(Time to Live birth; TTLB)という評価法があり、着床前スクリーニング(PGS)の有効性を評価する際などに用いられています。
ご来院された際には、それぞれの治療法のいわゆる「妊娠率」をご説明していますが、どの表現も100% 客観的なものではないことを知っておいてください。