私が日々の診療で提供したいと願うもの
- 2017年2月5日
- 院長
前回のブログで、待ち時間改善への取り組みを書いておきながら、年末年始採卵を行わなかったために1月は採卵、移植の方が多く、結局外来で長くお待たせする日もあり、大変申し訳ありませんでした。もう少し様子をみて、必要があれば、再度システムを検討したいをと思いますので、ご理解の程お願いいたします。
さて、昨年末に亡くなった母の最後の数か月を振り返って、私は改めて医療について考える機会を持つことができました。母については、高齢者に対して医療の最終目標は必ずしも人の命を1日でも長く伸ばすことではなく、定められた寿命をいかに最後まで人として尊厳を持って生きられるよう手助けできるかでもある、ということです。母は自分なりに最期の時期を知っていて、延命処置なく静かに父のもとへ去って行ったような気がします。
私の仕事である不妊治療については、医療の最終目標は出産です。治療周期が妊娠に至らなければ、私自身、医療行為としての敗北を感じます。皆さんも出産を希望してクリニックへいらっしゃるわけですし、アンケート調査でも必ず「まだ妊娠という結果が出ていないので、クリニックの評価は〇〇点です」という回答をいただきます。しかし、これまでにも書いてきましたが、私は妊娠・出産という結果がすべてではないと考えています。治療が的確なもので、正しく行われれば、治療という経験そのものにも意味があります。
私もスタッフも診療理念にあるように、最高の医療を提供できるよう日々努力、勉強して、一人一人に真剣勝負で臨んでいます。「当院の実績」にも示したように、体外受精によって、40歳未満の女性であれば、半数以上の方が妊娠、出産に至っています。しかし、卵子、精子、子宮の問題のために、どうしても出産が叶わない方たちもいます。出産に至った方も、願いが叶わなかった方も、それぞれの方が自分らしくその後の人生を生きていけるように、治療に寄り添うことが不妊治療という医療のあるべき姿だと思います。