体外受精の費用と保険適応
- 2021年12月17日
- 院長
皆さん、こんにちは。今年もあと2週間になりましたね。
今回は、体外受精の保険適用と関連して、体外受精の費用についてお話しします。
以前から、体外受精の費用はどのようにして決めているのか、なぜ施設によって費用が大きく違うのかという質問をいただきます。おそらく施設ごとのポリシーが反映されているのだと思いますが、私は、以下のようにして決めています。
体外受精治療は、1年を目途に通院していただくものだと思っています。そのためには、患者さんが安心して通えるように医療スタッフとの間に信頼関係(ラポール)を築くことが大切です。信頼関係は慌ただしい外来の中では築けません。プライバシーが保たれ、落ち着いて話ができる空間が必要です。その落ち着いた空間(豪華という意味ではありません)の中で患者さんの話をきちんと聞き、医学的に必要なこと、必要でないことを丁寧に説明します。そうなると、1日に診察できる患者さんの数は15人程度、1か月の採卵件数は20人程度になります。これらをもとに、家賃、人件費、必要機器や資材にかかる費用、スタッフの研修費用等を合わせた必要経費を賄うための体外受精費用が割り出されます。
ここで重要なことは、患者さんの話をよく聞き、納得してもらえるまで説明をするという、形には表れないけれども「人と人とがかかわりあう」医療として大切な時間が算入されていることです。横浜HARTクリニックに通院していただいている(いた)方にはご理解いただけると思いますが、この「空間と時間」が当院が大切にしているものの一つです。当院の妊娠率が高いのも、治療の効果と限界をきちんと理解した上で、採卵3回を目標に通院していただいているからだと思います。
単に、採卵、培養、移植というような個々の手技や処置、諸検査に対していくらくらという計算ではないのです。初診から治療の終了まで責任を持って診療することを考えて決めているのです。十分な説明もせずに採卵・移植を繰り返すことは不妊治療ではないと思って30年間やってきました。従って、体外受精治療に各項目一律いくらという費用を設定してしまうと、これまでに提供してきた診療はたぶんできなくなってしまいます。
2022年4月から適用されるといわれている保険診療を当院がするかどうか、できるかどうかは分かりません。