皆さん、こんにちは。
前回のブログ(2023年10月8日、「目に見えない大切なもの」)で、私たちが日々の診療の中で大切にしていることについて書きました。そして、それが単なるホスピタリティーではなく、実際に結果に結びつく、人を診る医療行為であることに触れました。
実は、「大切なものが目に見えない」ということを初めて意識したのは、小学生の時、皆さんも良くご存じの「星の王子さま」(サン=テグジュペリ作、内藤濯訳、岩波書店、1972年)を読んだ時です。第21章で王子さまは一匹のキツネと出会うのですが、キツネは孤独な王子さまに、ただの通りすがりの関係が世界中でかけがえのない存在になる<仲良くなる>ために必要なことを教えてくれます。時間を共有すること、お互いの距離間を大切にすること、ルールを決めて従うこと、そして仲良くなった後には責任が生じること。
さらに、キツネは王子さまと仲良くなったことで、今まで興味がなかった麦の金色の穂を見るたびに、王子さまの金色の髪を思い出して幸せな気持ちになれると言います。離れていてもずっと心の中にいて、その人を幸せにすることができるのですね。
王子さまが旅を続けるためにキツネと別れる時、キツネは王子さまに、おみやげとしてひとつの秘密を伝えます。「さっきの秘密をいおうかね。なに、なんでもないことだよ。心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ」(原文のまま)。
今の時代に、こういったことはもう理想でしかないのかもしれません。でも、横浜HARTクリニックで、私たちが患者さんに体感していただきたいことは、上に書いた通りのことなのです。ご夫婦、ご家族がいつまでも幸せに、折に触れて横浜HARTを思い出していただいたときに温かい気持ちになっていただければ本望です。少しでも多くのご夫婦に私たちのことを知っていただきたいです。
皆さん、こんにちは。
ようやく涼しくなってきましたね。過ごしやすくなりましたが、猛暑の疲れが出る時期でもあり、コロナに加えてインフルエンザも流行っていますので、引き続き体調には気を付けましょう。
開業時のHP(2014年、当時は文字が多い時代でした)のごあいさつに、「出産という結果につながっても、残念ながら出産という願いが叶わなくても、横浜HARTクリニックが最後のクリニックであって欲しいと思います」と書きました。この思いはもちろん今も変わりません。高い医療技術を提供するのはもちろんですが、それだけではなく、患者さん一人ひとりの気持ちを大切に、悔いのない治療を全力でサポートしたいという思いです。
当院を受診される方の多くは治療経験がおありです。以前にタイミング指導や人工授精を受けていたけれども諸事情で中断した方や、体外受精を何回もトライした方など。特に後者の方では、先進医療と呼ばれる検査や処置(ERA、タイムラプス、子宮内フローラ、2段階移植など)も一通りされていて、今後どうしていいかわからないという思いで受診されます。
そんな時、今更と思われるかもしれませんが、シンプルに基本に忠実な治療をご提案しています。何か特別なことをトライするわけではなく、一つ一つのステップを丁寧に確実に実施して、その足し算あるいは掛け算が結果につながるようにするのです。卵巣刺激は強すぎても弱すぎても良くありません。採卵は痛みなく安全に実施しなければいけません。媒精(授精)、胚の培養・凍結・融解では胚にできるだけストレスがかからないようにしなければなりません。胚移植は優しく短時間に行わなければいけません。子宮内膜の調整はその方に適した方法を選ばなくてはいけません。これらのどのステップも普段の診察の際にどれだけ集中して情報を集めるかにかかっています。
そのようなシンプルな治療方針が、転院前よりも良い結果につながる方が多いのは、得られる卵子の質が良いからで、その理由は私たちに対する「信頼」だと考えています。信頼は「安心感」につながり、安心して通うことは「ストレスの軽減」となり、緊張感が取れます。心身がリラックスすることで、血流を介して卵巣の緊張もほぐれ、良い卵子が得られるのではないでしょうか。信頼関係を築くためには時間を共有することです。お一人の予約枠に約30分の時間をお取りしているのもそのためです。さらに、診察の都度、「いくらかかるのだろう」という費用の不安をなくすため、定額費用を導入しています。
先日、ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)から、「付加的な検査、処置(add-ons)」についてのレビューが発表されました。タイムラプス、SEET法、子宮内膜スクラッチ、PGT-Aなど42項目について検討した結果、1項目(ヒアルロン酸入りの胚移植培養液)を除いて、全てその有効性、安全性に関するデータが不充分なため実施を推奨しないと結論しています。また同じくESHREからの、原因不明不妊症についてのガイドラインでは、心理学的なサポートを有効であると強く推奨しています。
私たちは、何もやっていないのではなくて、目に見えない大切なものを心を込めて提供しているのです。初診から終診までを通じた「治療体験」として提供します。それが妊娠の可能性を高めると信じているからです。「不妊治療なんてこんなもの」とあきらめている方はぜひ一度ご相談ください。一緒に可能性を考えてみましょう。