ご挨拶と皆様へのメッセージ
- 2023年12月29日
- 院長
皆さん、こんにちは。
2023年もあと3日になりました。今年、当院にご通院いただいた方、お問い合わせいただいた方、凍結受精卵の保存期間延長手続きをいただいた方、元気な顔を見せにクリニックにお寄りいただいた方、皆さんありがとうございました。スタッフ一同、心から感謝申し上げます。
私達、横浜HARTクリニックは来年10周年を迎えます。この10年間には、当然のことながらさまざまなことがありました。その中で私たちが10年間変わらず守り続けてきたことがあります。それは、患者さん一人ひとりと本気で向き合い、一緒に考え苦しんで、最善の解決策を見出すことです。患者さんの思いや心の揺らぎを尊重し、今何が出来るかをリアルタイムに考える。物言わぬ卵子、精子、受精卵に思いを馳せて、1%でも妊娠の可能性を上げる努力、手間を惜しまない。そういう治療体験を提供し続けてきました。患者さんに治療を無理強いすることなく、また患者さんがエビデンスの無い情報に振り回されて疲れたり、治療をあきらめてしまったりすることの無いよう、十分な時間を取って治療を進めるにはどうしても自費診療でなければならないのです。
横浜HARTクリニックが誇る妊娠率の高さには理由があります。①看護力、②卵巣刺激、③顕微授精、④胚移植です。
①看護力は、看護師長平良さんの人間力です。治療を通して皆さんを本気で受け止めてくれます。医療スタッフは患者さんを患者さんとして対応しがちですが、どちらも同じ人間です。ただ、たまたまスタッフ、患者さんという役割が違うだけなのです。特に不妊治療では、身体的な負担だけではなく、精神的な負担や、配偶者、親との関係など、さまざまなことが関与していて、それを話せる存在が看護師なのです。ですから、信頼できるクリニックには、しっかりとした看護力が欠かせません(インスタグラムに平良さんからの動画メッセージがありますのでご覧ください。またジネコにインタビュー記事がありますので、そちらもご覧ください)。
②卵巣刺激は、医学的根拠に基づいて、そして安全に行わなければ効果がありません。卵巣予備能力が平均的な(AMHの数値が低過ぎない)方には、低刺激や中刺激ではなく高刺激が有効です。OHSSに注意しながらも、できるだけ1回の採卵で結果が得られるように刺激法を選択しています。
③顕微授精は、当院では敢えてPIEZOを行っていません。通常の顕微授精の方が、精子を注入した際の卵細胞内カルシウム濃度の上昇が有効で、卵子の活性化がしっかりと起きるからです。したがって、人工的な卵子活性化をする必要がありません。一方、卵子が変性しないよう、PIEZOに比べれば技術が必要です。精子の選別には生理的な方法として、ヒアルロン酸に結合する精子を用いた PICSI を実施して効果を得ています。
④胚移植は卵巣刺激から始まる、採卵、媒精、培養、凍結、融解に至る集大成のステップです。肉眼では見えない胚を子宮の中にきちんと戻すことが全てです。お腹から超音波で確認しながら行うこともありますし、子宮後屈の方には、普段外来で診ている画像を記憶して、指先の感覚を頼りに行う(クリニカルタッチといいます)こともあります。また、子宮内膜に不妊原因がありそうな方には、テーラーメイドな準備を行います。
⑤もう一つ、当院では niPGT-A という着床前検査を行っています。私は、受精卵を傷つけること、ダウン症など特定の染色体異常を排除することに抵抗があるため、PGT-Aに積極的ではないと以前に書きました。しかし、胚に触れることなく、培養後の培養液を調べることで、ダウン症のように特定の染色体についての情報を得ることなく、染色体正常な胚を選べることからこの方法を用いています。これを非侵襲的(non-invasive、略して ni と書きます)PGT-A といい、私は個人的に niPER (移植胚優先順位付け)と呼んでいます。簡単そうに見えますが、TEバイオプシーよりもセンスと技術が必要です。
当院は、日本産科婦人科学会にPGT-A実施施設として登録はしていませんが、niPGT-AはPGT-Aとは全く別のものであり、遺伝学と着床前検査に30年以上の経験を持つ後藤が丁寧に説明致します(当院のインスタグラムもご参照ください)。
どんなに見た目がきれいな受精卵でも着床しないことはよくありますし、逆に難しいかなと思う受精卵が元気な赤ちゃんになることもあります。日々の臨床は教科書に書いてあるようにすんなりと進むのではありません。検査結果や数値にとらわれることなく、目の前の患者さんと受精卵を深く診て、自分たちの知識、経験と照らし合わせて、患者さんの希望も聞きながら、最大限の結果を生み出せるよう努力することが大切です。
良い卵と精子があれば何とかなります。私たちはずっと「最後の砦」になりたいという思いで診療してきました。横浜HARTでダメならあきらめると思っていただけるような治療を提供致しますので、真剣に苦しんでいらっしゃる方は、ぜひご相談ください。