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抗ミュラー管ホルモン(anti-Mullerian hormone, AMH)という名前をご存じの方は多いと思いますが、正しく理解していらっしゃるでしょうか?
AMH は、卵巣内の直径 2-6 mm の卵胞から産生されます。卵子そのものではなく、顆粒膜細胞が産生し、血液検査で調べることができます。FSH(卵胞刺激ホルモン)と違って月経周期内および周期間の変動が少ないため、いつでも(生理何日目でも)測ることができますし、頻繁に測る必要もありません。
直径 2-6 mm の卵胞というのは、卵巣刺激に反応する大きさの卵胞です。自然周期では 1 個しか育たない卵胞が、注射などの卵巣刺激をしたら何個くらい育つかという「数の指標」となるので、「卵巣予備能力 (ovarian reserve)」と呼ばれます。よくマスコミなどで「卵巣年齢」と言われますが、誤解を招くあいまいな表現で正しくありません。確かに女性の年齢とともに卵胞の数は減りますから AMH の値も下がっていきますが、必ずしも個々の卵胞(卵子)の質を表しているわけではなく、妊娠できるかどうかという「質の指標」にはなりません。
卵子の質に最も影響するのは、女性の年齢です。したがって、AMH が 1 の 30歳の方と AMH が 3 の 40歳の方とでは、前者の方が妊娠に至る可能性は高いのです。
それでは何のために AMH を測るのでしょうか?私は 2 つの理由で測っています。1 つは、治療を進めていく時間的余裕を見るためです。卵子の数が減ると治療の選択肢が減るので、AMH の値が高いうちに治療を進めたいと思っています。もう 1 つは、体外受精へ進む場合、卵巣刺激が有効かどうか、有効ならどういう方法が効果的で安全かを見るためです。
最後に、AMH の数値を見る際に、単位に注意してください。いぜんは pmol/L (pM) という単位でしたが、現在は ng/ml という単位を用いています。pM 単位を 7.14 で割った数字が ng/ml になります。
東京大学医学部卒業
産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)
アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設
イギリスロンドン大学大学院 医学博士(生殖遺伝学)
オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設
東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医