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寒暖の差が大きい日が続いていますが、体調はいかかですか?
今回は、事実婚に関する私の考えを書きたいと思います。事実婚を定義したり、その良し悪しを議論するわけではなく、不妊治療の現場で働く医師として、生まれてくる子供の立場を踏まえて、思うことを書きます。
以前から事実婚のカップルの方は来院されていますが、最近少し増えてきたような気がします。様々な理由で、戸籍上の婚姻関係は結ばないが、戸籍上の婚姻関係にある夫婦と同じ、安定した男女関係にあるのなら、差別されるべきではないと思います。日本産科婦人科学会も、体外受精は婚姻関係にある夫婦に限るとしてきましたが、少し前に、事実婚関係にあるカップルに対しても考慮すると立場を変えています。
私は、事実婚カップルの方に対しては、それぞれの戸籍謄本のコピーを提出していただいて、どちらも他の誰とも婚姻関係にないことを確認しています。まだ誰かと婚姻関係があって離婚調停中であったりすると困るので、シングルであることを確認後、治療に進むようにしてきました。
これまでは、カップルの方に「2年程度は夫婦として暮らしてきましたか?」とか「周囲の人からも、夫婦として見られていますか?」というような質問をして、その返答を信用して治療に進んできました。しかし、最近は晩婚化の影響もあり、出会ってから1年未満のカップルや、性行為のないカップルも来院され、治療に進むべきかどうか悩むことも多くなりました。
改めて考えてみれば、出会って1週間の男女が妊娠を考えて悪いことはありませんし、婚姻関係があって子供を望んでいても性行為を持たない(持てない)夫婦もいます。逆に、治療を受けるために形だけ入籍するというケースもあるかもしれません。
当事者の間だけの行為であれば、私がとやかく言う必要はありませんが、ただ、医療従事者として、第3者として、子供を生み出すという神聖な行為に協力するとなると、やはり生まれてくる子供の福祉を最優先して考えます。事実婚という関係が安定して続くだろうか、どちらかがいつの間にか子供を残して去って行ってしまわないだろうか、もし生まれてきた子供に障害があってもいつまでも二人で協力して育てていけるだろうか、いろんな思いが頭をよぎります。
戸籍上の婚姻関係にこだわらず、皆さんの子供を持ちたいという「真剣で誠実な」思いには応えたいと思いますので、今回、新たに、「事実婚関係および出生児養育に関する誓約書」を作成し署名いただくことにしました。該当する方々には、お手数ですが、大切なことですので、ご協力をお願いします。
東京大学医学部卒業
産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)
アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設
イギリスロンドン大学大学院 医学博士(生殖遺伝学)
オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設
東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医