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皆さん、いかがお過ごしですか?
ここ数年、毎年、「最大級の警戒を」とか「経験したことのない」とか叫ばれながら、未然に防ぐことができずに繰り返される水害には心が痛みます。また、今年はコロナウィルス感染症によって不自由な生活を余儀なくされ、さらに地震の可能性も考えると、国から言われなくても、私たち自らが「新たな生活様式」を考えるべきなのだと思います。
「新たな生活様式」を考えるのであれば、その社会生活の中で個々の事柄について考えてもいいでしょう。私の場合は、不妊治療、少子化、子育て、子供の福祉、などの側面から日々思うことを述べてみます。
日本の少子化は数年前に予測されていた以上に速く進んでいます。晩婚化や生涯未婚率の増加によって出産する女性の割合が減少していることに加えて、母集団である、いわゆる生殖年齢にある女性の人口自体が減少し始めています。さらに不妊で悩む女性にとって仕事と治療の両立は大きな問題であり、治療が長引く場合には、本意ではなく治療をあきらめざるをえない方も多いことでしょう。
本気で少子化を改善することを考えるなら、「新たな家族様式」を検討する時期ではないでしょうか。妊娠したい、出産したい、子供を心から愛して育ててみたいと思う夫婦に対して、その思いが叶わないなら、いろいろな選択肢を提供する時期に来たのではないでしょうか。精子に原因があるなら精子提供を、卵子に問題があるなら卵子提供を、子宮に問題があるなら代理懐胎を選択肢とするべきでしょう。あるいは、不妊治療そのものをやめて(特別)養子、里親を選択する方もいるでしょう。夫婦二人での子育てが大変なら、様々な人が様々な形で子育てに参加してみんなで育ててはどうでしょうか。
さらに、レズビアンやゲイの人たちの婚姻が法的に認められるのであれば、その方々が子供を持ちたいと思うのは自然であり、私たち生殖医療従事者は、その気持ちにも応える準備をすべきでしょう。
まずはいろいろな方々の思いを聞くことから始めて、自分にできることを誠実に実行していきたいと思います。不妊治療が辛いだけの思い出にならず、その過程、経験が、そのカップルにとって何かしら人生の糧になり、子供を授かったのであれば覚悟を持って子育てをしていただけるように手助けできたらいいですね。
東京大学医学部卒業
産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)
アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設
イギリスロンドン大学大学院 医学博士(生殖遺伝学)
オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設
東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医