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皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか。
今年4月から体外受精が保険診療になり、皆さんそれぞれに頑張っていらっしゃることでしょうね。
当院では今年1月にHPのお知らせ欄で、4月以降も自費診療を継続することをお伝えしました。それにより、保険診療ができる施設へ転院された方もいらっしゃれば、自費診療であることをご理解いただいたうえで通院していただいている方もいらっしゃいます。前者の方々には、ご迷惑をおかけしたことについて心からお詫び申し上げます。後者の方々には、改めてお礼申し上げます。
さて、今回は私がどうしても自費診療を継続したい理由をお話しします。他施設でも、自費診療を行っているとは思いますが、おそらく保険診療と自費診療を選べるようになっているのでしょう。そして、保険か自費かを選択する場合、「保険診療であればここまでです」、「検査A、処置Bを加えるなら自費診療になります」というように、目に見える形での付加的な違いがあるので、その差がわかりやすいのだろうと思います。一方当院では、もともとシンプルな治療をしており(これは30年以上の臨床経験から、付加的な検査・処置をしても出産率は変わらないということに基づいています)、PGTもERAもEMMAもALICEもタイムラプス観察も行っていませんので、目に見える形で何かが違うというわけではありません。
では何が違うのかというと、これまでブログ等でも説明してきましたが、「患者さんの話をきちんと聞いて、医学的に正しいことを説明して、安心して治療を受けていただく」ことです。「話をしたって妊娠するわけではないでしょ」と思う方もいらっしゃることでしょう。確かにその通りです。しかし、「当院の実績」にも示している、妊娠に至るまでに必要な刺激周期による3回の採卵をやりきることは、身体的にも精神的にも大変で、治療開始前に丁寧に説明をしないとフェードアウトしてしまう方も少なくありません。従って、体外受精の効果と限界をきちんと理解していただいてから治療をスタートし、中期、長期目標を定めて、目の前の結果に一喜一憂し過ぎずに治療を進めていただくことが大切なのです。
クリニックの設備は粗末でも豪華でもなく、「待合室」ではその時の心の状態に従ってくつろげるように、「診察室」ではゆっくりと落ち着いて話せるように、「内診室」ではリラックスして診察を受けていただけるように、「処置室」では医師と話せなかった(話しにくかった)ことをナースと話せるように、「場」「空間」を意識した作りになっています。保険診療の点数には表れない、医療従事者と患者さんが、「人と人として」悩み、苦しみを共有できることにこだわっています。
私達が大切にしたいのは、不妊で悩むことになった患者さんご夫婦の人生に寄り添うこと、一歩進んではまた困難にぶつかり、「私はなんでこんなにつらい思いをしているのだろう」、「夫(妻)はどう考えているんだろう」「流産しないかと毎日毎日心配でつらい」「子供が生まれたら大丈夫かな」といったたくさんの不安や悩みを抱えながら治療に向き合う方々を心から応援したいと思っています。ですが、多くの患者さんを診察することはできません。一日に診察できる人数には限りがあります。妊娠、出産がゴールではありません。生まれてから、何十年にわたる子育てに覚悟を持って臨めるように、悔いのない不妊治療をサポートします。
言葉は悪いですが「手っ取り早く妊娠したい」という方には横浜HARTは認めていただけないと思います。何がどうつらいのかもわからないということでもいいのです。私も看護師長の平良さんも、そんな悩み全てを受け入れる準備ができています。安心して3回の採卵を目標に頑張っていただくこと、シンプルに頑張ること、それが妊娠への近道です。転院をお考えの方、治療の終結をお考えの方、最後の砦としてぜひ当院にご相談ください。
東京大学医学部卒業
産婦人科研修医(東大附属病院分院、都立築地産院、国立習志野病院)
アメリカウィスコンシン大学高度生殖医療施設
イギリスロンドン大学大学院 医学博士(生殖遺伝学)
オーストラリアモナッシュ大学体外受精施設
東京HARTクリニック副院長
横浜HARTクリニック開業
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医