皆さん、こんにちは。お元気ですか。
2020年もあと3週間ほどになりました。今年は、コロナウィルス感染症の影響で、治療の延期をお願いした時期があり、大変ご迷惑をおかけしました。
それでも、今年も昨年と同程度、約150周期の採卵と、同じく約150周期の凍結胚移植を、事故なく安全に行うことができました。幸い、患者さんにもスタッフにもコロナウィルスに感染した人はなく、継続して診療を行えたことは皆さんの協力のおかげです。改めて感謝致します。引き続き、待合室が密にならないよう予約の取り方に配慮し、消毒を徹底していきます。
いつも同じことを書いて恐縮ですが、当院ではできるだけシンプルに、基本に忠実な刺激周期による体外受精治療を行っています。古いと思われるかもしれませんが、その治療方針で大半の方が妊娠に至っています。エビデンスのない検査を行ってその結果の説明に時間を使うより、患者さんが不妊という状況にどう悩み苦しんでいるのかを聞き、人としてきちんと向き合いたいと思っています。妊娠することだけが最終ゴールではありません。治療過程そのものがその後の出産、子育て、引いてはその方の人生にとって意味のあるものであって欲しいと思っています。
新たな取り組みとして、今年は卵子提供の準備をしてきました。国内の卵子提供支援団体が募集している匿名卵子ドナーと、卵子提供による治療を希望されるレシピエント夫婦間の治療です。私自身は、匿名よりはお互いに人がわかる方がいいと思っているので、当クリニックとして非匿名卵子ドナーを募集していますが、今のところ応募がありません。国も法整備を進めているようで結構ですが、生まれてくる子供の福祉を守るためには法だけでは不十分で、個々のケースについて医療従事者がドナーとレシピエントの人間性を良く知り、ドナーとレシピエントが健全な関係を確立した上で、治療、子育てができるよう親身に関わることが重要です。
コロナウィルスがきっかけで誰もが自身の生活の見直しを余儀なくされています。子供を持つことの意味を改めて考えてみた方も多いと思います。不妊治療に対する助成金の拡大や保険診療化も進められており、不妊治療の在り方も変わって行くことでしょう。しかし、私はこれまで通り、一人一人の方と時間をかけてきちんと関わり納得のいく治療を提供し続けたいと思います(そのためにはやはり自費診療が必要でしょうね)。
皆さん、こんにちは。毎日暑い日が続きますね。
前回のブログで卵子提供に触れましたが、もう少しお話しましょう。
誰かに卵子をあげる人を提供者(donor、ドナー)といい、卵子をもらう人を被提供者(recipient、レシピエント)といいます。卵子提供による不妊治療において、金銭の授受を伴うものを有償、伴わないものを無償と呼びます。卵子提供者の身元を隠して提供する場合、匿名ドナーといい、身元を明かす場合を非匿名ドナーと言います。
最近、あるエージェントを通して、匿名、無償で、卵子ドナーになりたい日本人の方々と接する機会がありました。なぜ無償で卵子ドナーになりたいのかと尋ねたところ、多くの方が「自分は妊娠、出産の予定がないので、卵子提供という形で自身のDNAを残したい」と回答されました。無償での提供の場合、altruistic(利他的、愛他的)という英語をあてることが多いのですが、この回答は純粋な altruism ではないですね。自身のDNAを残したいというところに利己が存在しています。
理想を言えば、妊娠、出産経験のある女性が、自分の妊娠、出産、子育てを通して、子供を産み育てることがどれだけ大変なことか、でもその大変さに見合うだけの人生経験を与えてくれる、そのような経験を心から望む夫婦のために何の見返りもなく卵子を提供してもいい、という場合をaltruismと言うのでしょう。
匿名性について言えば、匿名、非匿名はドナー、レシピエント共にそれぞれの希望により、どちらが良いとは言えません。しかし、レシピエントにしてみれば、ドナーの身元は伏せられていても(匿名)、身長や体格、趣味(運動が好きか、静かに本を読むことが好きか)、どんな仕事をしているのかなどの情報は欲しいのではないでしょうか。今は、卵子提供によって生まれてくる子供達には、卵子提供によって生まれたことを告げる(出自の告知といいます)のが通常ですから、必要な情報だと思います。
また、ドナーが匿名でいたいと思い、現在の法律でその権利が守られているとしても、10年20年後にもその法律が有効であるとは限りません。子が出自を知る権利を主張し、ドナーの身元を明かすように申し出て、その権利が法的に認められるようになれば、ドナーの匿名性は守られないでしょう。
卵子提供は様々な課題を含んでいます。国ごとに文化も違いますから、いろいろなやり方があると思います。しかし、すべては生まれてくる子供の幸せが最優先です。日本で卵子提供が根付くかどうか、まずドナーになりたい人がどのくらいいるのか、そしてどのような動機でドナーになりたいのか、把握したいと思っています。そして、常に10-20人のドナー希望者が確保できるようであれば、卵子提供を治療の一つとして行うことができるのではないでしょうか。
皆さん、いかがお過ごしですか?
ここ数年、毎年、「最大級の警戒を」とか「経験したことのない」とか叫ばれながら、未然に防ぐことができずに繰り返される水害には心が痛みます。また、今年はコロナウィルス感染症によって不自由な生活を余儀なくされ、さらに地震の可能性も考えると、国から言われなくても、私たち自らが「新たな生活様式」を考えるべきなのだと思います。
「新たな生活様式」を考えるのであれば、その社会生活の中で個々の事柄について考えてもいいでしょう。私の場合は、不妊治療、少子化、子育て、子供の福祉、などの側面から日々思うことを述べてみます。
日本の少子化は数年前に予測されていた以上に速く進んでいます。晩婚化や生涯未婚率の増加によって出産する女性の割合が減少していることに加えて、母集団である、いわゆる生殖年齢にある女性の人口自体が減少し始めています。さらに不妊で悩む女性にとって仕事と治療の両立は大きな問題であり、治療が長引く場合には、本意ではなく治療をあきらめざるをえない方も多いことでしょう。
本気で少子化を改善することを考えるなら、「新たな家族様式」を検討する時期ではないでしょうか。妊娠したい、出産したい、子供を心から愛して育ててみたいと思う夫婦に対して、その思いが叶わないなら、いろいろな選択肢を提供する時期に来たのではないでしょうか。精子に原因があるなら精子提供を、卵子に問題があるなら卵子提供を、子宮に問題があるなら代理懐胎を選択肢とするべきでしょう。あるいは、不妊治療そのものをやめて(特別)養子、里親を選択する方もいるでしょう。夫婦二人での子育てが大変なら、様々な人が様々な形で子育てに参加してみんなで育ててはどうでしょうか。
さらに、レズビアンやゲイの人たちの婚姻が法的に認められるのであれば、その方々が子供を持ちたいと思うのは自然であり、私たち生殖医療従事者は、その気持ちにも応える準備をすべきでしょう。
まずはいろいろな方々の思いを聞くことから始めて、自分にできることを誠実に実行していきたいと思います。不妊治療が辛いだけの思い出にならず、その過程、経験が、そのカップルにとって何かしら人生の糧になり、子供を授かったのであれば覚悟を持って子育てをしていただけるように手助けできたらいいですね。
こんにちは。皆さん、いかがお過ごしですか。
6月に入って街や通りには人が増えてきました。お店も再開したり、営業時間が延びたり、少しずつ活気が戻りつつあります。早く、以前のように仕事ができる日々が戻って欲しいですね。
さて、皆さんはクリニックを選ぶ際、どのようなことを基準に考えますか?妊娠率、診療時間(仕事との両立)、場所、費用が大半ではないでしょうか。不妊治療(ART)施設の場合は個人クリニックが多く、ホームページにはたいてい院長の写真やプロフィールがありますから、人を見てという方もいらっしゃることでしょう。来院してみて、思った通りという方もいれば、期待はずれという方もいらっしゃると思います。
しかし、通院中一番多く時間を共にするのは看護師です。当院では、平良(たいら)看護師長が全ての患者さんと関わります。採血、注射指導、採卵・胚移植補助などの技術が高いのはもちろんですが、人として患者さん一人一人と丁寧に接しています。ですから、電話口で「〇〇です」と言えば、「あー、〇〇さん、その後△△はどうですか?」と具体的な返事が返ってきます。看護部は患者さんを中心に、受付事務、医師、培養部の全体が見渡せるポジションで、コーディネーターの役割を果たします。平良看護師長は患者さんそれぞれの事情や性格や体調に思いを馳せて、できる限りの配慮をしてくれます。医者の私が気付かない部分を補ってくれる非常に頼もしい存在です。
もう少し話しておくと、平良看護師長は唯一6年前の開業からずっとクリニックを支えてくれているスタッフです。6年前、看護師歴14年、真剣に不妊治療を学びたいと応募してきました。約9年の精神科での勤務経験があり、人の心の複雑さを知った経験は不妊治療を学ぶ上できっと大きな糧になるだろうと思い、当院に来てもらいました。6年経った今、その判断は正しかったようです。最近は心に悩みを抱えた方が増えているように思えます。現代を生きることはそれだけ大変なことなのでしょう。妊娠、出産、子育てがしっかりと地に足がついたものとなるよう、私たちは関わっていきたいと思っています。
今日は、皆さんからお預かりしている大切な凍結受精卵(凍結胚)についてお話しします。
凍結受精卵の保存期間は施設ごとに任意に決められています。胚移植後、妊娠が成立してから分娩までが9か月、出産後1年間授乳するとして、凍結から2年程度を保存期限とし、その後は1年単位で延長費用をいただくことが多いのではないでしょうか。
当院では、期限が来てもクリニックから延長を希望するかどうかはお聞きしていません。その代り、1年の余裕を持って、凍結から3年間を保存期限としています。これは私の経験に基づきますが、保存期限が近づいた際に「保存を延長しますか」と聞かれた場合、もう出産を考えていなくても心情的に「希望しない(廃棄して欲しい)」と返信できない方が少なからずいらっしゃるからです。凍結胚の廃棄処分に関してはあまり表面に出てきませんが、不妊治療がうまくいった後に精神的な負担を与えうるとしてずっと以前から指摘されている問題です。
では、当院での廃棄方法の実際をお話します。凍結受精卵には、赤ちゃんになる力を持った受精卵もあれば、力のない受精卵も含まれます。しかし、不妊で悩むご夫婦が子供を授かるために一緒に頑張った同志であることには変わりません。ですから、廃棄する際には、凍結胚移植を行う胚の場合と同じ方法で丁寧に融解します。通常、胚移植をする場合には、融解後に回復をサポートする培養液で培養するのですが、廃棄する胚については積極的にサポートせずに1日置きます。翌日、発育が停止していることを確認した後、その他の発育停止胚と同じように廃棄します。他にも方法があるでしょうが、きちんと礼を尽くすという意味で、このようにしています。
「この方法でも忍びない」、「もう妊娠は考えていないが、自分の体に戻して区切りをつけたい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。そのような方には、妊娠しない環境の子宮内または腟内に受精卵を戻す、compassionate transfer という方法があります。ドライに考えれば医学的に意味のないことでしょうが、不妊治療は精神面で奥深いところがあり、それぞれの方がどのように区切りをつけるか、あるいは折り合いをつけて生きていくか、私たち医療従事者がきちんと関わる大切なことだと思います。
凍結受精卵について相談したいことがあれば、遠慮せずにぜひご来院下さい。
皆さん、こんにちは。少しずつですが、街に人や車が増えてきましたね。皆さんの生活が早く元通りに、あるいは以前よりもより幸せなものになることを心からお祈りします。
さて、2カ月ほど前に書いたHART Newsletter の依頼原稿が印刷されたようなので、以下に転載しておきます。お時間のある時にお読みください。
この原稿が印刷される頃には、コロナウィルスによる新型肺炎も少しは収まっているでしょうか。開業してもうすぐ6年になりますが、多くの方々に支えられて今日まできました。改めてお礼申し上げます。この6年間、不妊で悩むご夫婦を全人的に診るよう心がけてきました。ARTではとかく技術先行なところがありますが、治療経験がご夫婦にとっても、生まれてくる子供にとっても辛いものとならないように努力しています。本来、不妊治療とは、「愛するパートナーとの間に子供を持ちたいと切に願う夫婦の卵子と精子が出会えるようにして、受精卵が子宮に着床できる環境を作ること」だと思っています。とてもシンプルなはずなのですが、近年様々な”add-on”(付加的な検査・治療)が現れ、患者さんの多くはその情報に困惑しているのではないでしょうか。これらadd-onのいずれもまだその有効性は証明されていません。
現在、日本で最も熱心に行われていることは受精卵の染色体検査(PGT-A)ですが、これもまだ、妊娠率(出産率)の向上や流産率の減少に貢献するか結論が出ていません。おそらく胚から細胞を採取すること(胚生検)の胚への侵襲によるのでしょうが、女性年齢が37歳位までなら、PGT-Aを実施しない方が妊娠率が高いという報告も散見されます。妊娠率も上がらず、流産率も減らないとなると、PGT-Aが確実にできることは、出産にいたる染色体異常、すなわち13番、18番、および21番トリソミーを診断することになります。これは、妊娠初期に母体採血で行う非侵襲的出生前診断(NIPT)と同じです。どんどん検査が増えて、どれもしないといけないような雰囲気になると、治療も息苦しくなりますね。さらに、妊娠に備えて身体を整えましょうというプレコンセプションケア、病気の原因の一つは母親の胎内環境にあると考えるBarker仮説など、妊娠、出産を取り巻く状況は女性にとって窮屈なものになりつつあります。もっとシンプルで息苦しくない不妊治療に戻ることはもうできないのでしょうか?
皆さん、こんにちは。
相変わらず、コロナウィルス肺炎で落ち着きませんね。身体的にも精神的にもバランスを崩さないように頑張っていらっしゃることでしょう。
海外では、不妊治療再開へ向けてのガイドラインが作成されていますので、日本でもそれらを参考にして生殖医学会からまた何かしらの声明が発表されるのではないでしょうか?歴史を振り返ってみると、戦争や疫病、飢饉などで人口が大きく減少した後には、出産数が増えて人口が戻ることが多かったようですが、今回はどうでしょうか?経済と人々の生活の安定回復が達せられないと、子供を持つこともままならない状況が続く可能性があります。
今回の件では、国は必ずしも国民の生活を守ってくれるわけでないことがわかりました。私たち国民もそれぞれ環境が異なる中で考えも異なり、国民全員が一致団結して日々を送ることが難しいのもわかりました。しかし、それぞれがきちんと責任を持って自分の考えで行動するのであれば、国から押し付けられた方針に全員が従うよりは民主主義的には健全でしょう。いろいろな価値観をオープンに話し合って、お互いに尊重することが大切です。私は、不妊治療において、卵子提供、代理母、ゲイカップル、レズビアンカップル、など多様な選択肢を考えてきましたが、もう少し先のことかなと思っていました。しかし、世界がこんなに脆弱で、昨日までの当たり前な生活がほんの短期間で失われたり変わってしまうのであれば、先送りにしない方がよさそうです。今年はまず卵子提供から始めようと思っています。
生殖医学会の声明発表から2週間、緊急事態宣言から1週間になりますが、皆さんいかがお過ごしですか?自宅勤務の方もいらっしゃれば、職種上通勤している方もいらっしゃるでしょう。
休業要請をいうのは簡単ですが、実際それぞれに生活がありますから、実施を徹底するのは難しいでしょうね。政治家、官僚を見ていると一般国民の日々の生活の切実さを理解しているとは思えません。公僕として国民のために自らの命をかけて仕事をしている人がどれだけいるでしょうか。「大切な人の命を守るために」と言いますが、この状況が続けば、人々はコロナウィルスよりも、経済的に命を失う人の方が多くなるかもしれません。
日本の場合、初期に外国人の入国を制限しなかったこと、オリンピックの開催を優先したために、ウィルスの封じ込め時期を逸しました。しかし、理由はわかりませんが、日本では海外に見るような死亡率には至っていません。8割の接触を断つように言われていますが、今となっては4割と差がなさそうにも思えます。不妊治療専門医の間でも全員の意見が一致することはありませんから、感染症専門医の意見も異なり正解はないのではないでしょうか。
私にできること。例えば、治療費を上手くいった場合にのみいいただく、いわゆる成功報酬制はどうか。これは昔からの考えですが、そもそも不妊治療の成功、失敗とは何でしょうか?妊娠判定が陽性に出ること、子宮内に胎嚢が見えること、胎芽に心拍が確認できることでしょうか?きりがありません。流産しないこと、出産すること、奇形がないこと。でも、3歳になって発達が遅い、思春期になって手に負えないほどの反抗をする、警察のお世話になる、などいくらでも予定通りではないことが起こります。妊娠、出産、子育てとはそういうものではないでしょうか。だから、成功も失敗もありません。今できることに最善を尽くす。知識と技術と心が伴っていれば、結果がどうであれ、それが不妊治療だと思いますから、成功報酬という考えは当てはまりませんね。
皆さん、こんにちは。前回のブログ(2020年3月25日参照)に、一緒に頑張りましょうと書いたばかりですが、4月1日に日本生殖医学会から不妊治療を延期するよう要望する声明文が出されました(日本生殖医学会HP参照)。
3月25日のブログに書いたように、緊急度の低い治療は後回しにして、コロナウィルス治療に人的物的資源を集中しようという思いと、妊婦・胎児を守ろうとする思いからだとは思いますが、突然のことで不妊治療の現場には混乱が生じています。実際、夫婦でよく相談する時間もないまま、せっかく準備してきた凍結胚の移植をキャンセルした(する)方がいらっしゃいます。その失望感や悲しみが伝わるでしょうか?
今回のコロナウィルス肺炎のような状況下で、各組織や団体がそれぞれに要請や宣言や声明を出すことは混乱を招きます。必要なのは、コロナウィルスによる疫病が収束した後にどのような国を想定しているのかということです。国のリーダーはそのビジョンを明確に示す必要があります。70代80代の高齢者の救命に努力した結果高齢者人口は維持されたけれども、医療スタッフが疲弊して他領域の医療が機能しなくなる。産婦人科領域でいえば、今回のように妊娠を先送りすることで出生率がさらに低下し、年間出生数が60万人程度になるかもしれません。そのような極端な少子高齢化社会では、わざわざ妊娠を延期した人たちが幸せになれる保証はありません。
日本生殖医学会が声明文を出すのであれば、日本において妊婦がコロナウィルスに感染する可能性が何%なのか、肺炎が重症化する可能性が何%なのか、胎児に感染して後遺症を残す可能性が何%なのか、何かに基づいた具体的な数字を示すべきでしょう。そうでなければ、治療を中止あるいは延期すべきか、進むべきかの判断はとても難しいです。もともと正解がない不妊治療において、私たち医療従事者と患者さんはまた一つ答えのない選択肢を与えられました。4月1日の夜から、多くの患者さんと話をしてきましたが、この状況はしばらく続きそうです。
こんにちは。皆さん、頑張っていますか?
新型コロナウィルスの感染は更に広がっているようで、相変わらず落ち着かないですね。不要不急な外出を控えるとか、人が集まるところに行かないとか、確かにそうですが、現代社会は人々が複雑に関わり合ってそれぞれの生活があり、それぞれの事情を抱えて、様々な思いで生きています。皆が家から一歩も出ずに何週間も生活することは不可能です。一人一人が、置かれた環境の中で、自らが出来る範囲の衛生管理をして、情報に惑わされずに生きていくしかありません。
緊急性の低い診療領域の人的、物質的資源をコロナウィルス肺炎の患者さんの治療に振り替えようとする考えがあります。不妊治療も緊急性が低い分野の一つに入るようです。
不妊治療を今月でなくても、3か月先に伸ばすことは可能です。私も治療を延期される方が多いかと思いましたが、実際ほとんどの方が予定通りに治療されていますし、中には通勤が減り会社を休んだり早退しなくていいこの時期に治療を進めたいという方もいらっしゃいます。
それだけ不妊で悩む方が妊娠を望む気持ちは強いのです。実際、いい卵子が育つ周期は今かもしれません。肺炎で失われる命を守ることは大切ですが、生まれてくる命を守る治療も大切にして欲しい。生まれた子供といられる時間が少しでも長くなるように、私にできる精一杯のことをさせていただきます。