横浜HARTクリニック

〒221-0835 神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町3-32-13 第2安田ビル7階

横浜HARTクリニック

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ブログ・コラム

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卵子提供プログラム終了にあたって

皆さん、こんにちは。

一段と夏が近づいてまいりました。

暑い日、肌寒い日、と気候が落ち着かない日々ですが、体調を崩さないようにしたいものですね。

 

今回は、2020年より当院で開始した卵子提供プログラム終了に関しまして、この場をお借りして、改めてお礼とご報告をさせて頂きたく存じます。

これまでにご応募くださったドナー、レシピエントご希望者をはじめ、卵子提供の開始のきっかけであったNPO法人OD-NET卵子提供登録支援団体様、カウンセラーの方々、レシピエント希望者の受け入れ可否を含めご相談に乗ってくださった医療機関の先生方、

本当にありがとうございました。

心より感謝申し上げます。

 

当院としても非常に残念ではございますが、プログラム継続の可否に関して院長と時間をかけ、話し合いを重ねて参りました。

今回、プログラム終了に至った大きな理由としては、

ドナー、レシピエントそれぞれに、医学的あるいは心理的観点から、治療許可を出せる方が

殆どいらっしゃらなかった事です。

 

当院では安心・安全に治療を行うため、 ドナー、レシピエントともに

① 年齢

② 適性( 医学的検査や診察 / 心理的観点でのカウンセラーによるカウンセリング / 3親等までの遺伝疾患・精神疾患の有無 / 出産・子育ての経験 ※ドナーのみ )

③ 提供卵子による妊娠前〜妊娠後に医学的にフォロー可能な施設の受け入れの確保を行う  ※レシピエントのみ

を条件に、募集を行なって参りました。

 

しかし、知識が殆どなく応募の動機が曖昧な方、医学的・心理的観点から治療を勧められない方、が多く、治療まで至らない方が殆どでした。

そういった事情から、正しくプログラムを運営していく難しさの限界を感じ、今回、終了の判断に踏み切りました。

 

ちなみに、お電話での相談を含めると、50組以上の方からのご応募やお問合せをいただき、実際にご来院まで至った方はその半数の方でした。

ドナー、レシピエントのマッチング後、無事に出産できた方は1組、現在治療中の方は2組です。

数字だけを見ると非常に少ないように思われますが、それが現状です。

それだけ提供卵子による不妊治療は、生まれてくる子供の福祉も含め、夫婦間の治療とはまた異なる難しさ、深さがあります。

 

卵子提供という治療が正しく理解・認識され、日本でも定着していく事を願いつつ、このプログラムを開始し、啓蒙活動(卵子提供を正しく理解する目的)として、卵子提供セミナーも開催して参りました。

セミナーを受講された方々にとって、今後何かのお役に立てたらと願うばかりです。

 

約2年間、卵子提供に携わったことで、新たな生殖医療の視点を広げることができたこと、

倫理観、医療従事者の役割、などを改めて考え、悩んだ良い機会をいただきました。

深く感謝申し上げます。

 

最後はやはり、生まれてくる子供が幸せであることが重要です。

子供の福祉、子供への告知など、様々な課題もありますが、それらを全て理解した上で、卵子提供という治療がドナー、レシピエントにとって良い医療であることを願っています。

 

 

 

卵子提供コーディネーター

平良

移植胚の優先順位付け

皆さん、こんにちは。新年度を迎えて、お忙しい日々をお過ごしのことかと思います。まだ寒暖の差が大きいですから、お互い体調には気をつけましょう。

 

さて今回は、複数ある胚を移植する際に、どの胚から移植するか(優先順位付け)について考えてみます。

そもそも自然周期で採卵する場合は、原則1個しか卵子が得られませんから、得られる胚も1個(または0個)で、順位付けは必要ありません。しかし、自然周期では採卵あたりの妊娠率が低いので、当院では、卵巣刺激によって複数の卵子を採取し、複数の胚を得て、それらの胚に移植の順番をつけることになります。

 

移植胚の順位付けは、今も昔ももっとも一般的な方法は、形態(見た目)によるものです。現在は胚盤胞まで育てて評価することが多いです。ガードナー分類が広く用いられていますが、100%客観的に評価することは難しく、細胞の透明度であったり、フラグメントの量であったりと、基準にない観察所見や、患者さんの臨床背景なども加味して、移植の順位付けを行います。

 

しかし、どんなに綺麗な受精卵でも着床しないことも多く、その理由の一つに染色体の異常があることから、PGT-Aが行われるようになりました。胚盤胞まで培養することとあいまって、今は栄養外胚葉(TE)を採取して調べる方法が一般的です。これは、100個ほどあるTE細胞の中の5-10個程度を採取して調べるため、TE全体を表していない可能性があります。さらに、TEは将来胎盤になる部分であり、赤ちゃんになる細胞ではありません(その部分は内細胞塊、ICM)。

 

従って、TE生検(バイオプシー)では、偽陽性(ICMは正常なのに、TEは異常とでる)のために移植されずに廃棄されてしまう胚が生じることがあります。また逆に、偽陰性(ICMは異常なのに、TEは正常とでる)のために移植されることもあります。

 

さらに、PGT-Aによって正常胚と判断された胚を移植しても、出産率は50%と、形態による評価(順位付け)とさほど大きくは変わりません。上に述べたような、偽陰性によるものに加えて、生検(バイオプシー)による胚へのダメージが大きいと考えられます。

 

そこで、胚に侵襲を加えない評価法として、受精卵が培養液中に放出した物質を調べる方法があります。DNA、RNA、蛋白質がありますが、現時点ではDNAが一番解析されています。培養液中に存在するDNAが胚盤胞のどの細胞に由来するかはわかっていませんが、おそらく全体から放出されると考えられています。つまり、TE生検で得られる5-10個の細胞よりは、胚盤胞全体の状態を表している可能性があります。また、DNAの解析をあまり深く行わずに結果をパターンとして評価すれば、個々の胚の遺伝情報を扱うことにはならないでしょう。

 

DNAにせよ、RNA、蛋白質にせよ、培養液中にあるものを用いて胚を評価し、移植の優先順位をつけることを「非侵襲的な胚の優先順位付け」(non-invasive preimplantation embryo ranking; niPER)と呼んではどうでしょうか。

日々の診療に対する想い 2023

皆さん、こんにちは。

 

今回はこれまでにも何度か書いてきましたが、日々の診療に対する想いをつづります。

 

私は2014年7月に横浜HARTクリニックを開院しました。その前は12年間、東京HARTクリニックに勤務しました。その間私がずっと変わらず願ってきたことは、不妊という人生の大きな試練に悩む患者さんが、その試練ときちんと向き合って、自ら考えて答えを出せるように、医師として、一人の人間として、関わるということです。もし、最終的に妊娠に至らなかったとしても、「このクリニックに出会えて良かった」、「このクリニックだから通院できた」と言っていただければ、それは私達スタッフにとって最高の褒め言葉だと思っています。

 

不妊の悩みは深く、自分自身のものとしての悩みにとどまらず、配偶者や親との関わりにもつながることがあります。特に治療が体外受精まで来ると、身体的負担に加えて、精神的なストレスは相当大きなものになります。従って、医師や看護師の精神的なサポートが重要になりますが、慌ただしい外来の状況ではとても実施することができません。

 

ですから、それぞれの患者さんときちんと関わる(ラポールを築く)ためには、一か月の採卵人数は約20人と決めて開院しました。それに基づいて治療費も決まります。個々の技術(採卵、移植など)にそれぞれ費用はありますが、そこには初診でいらしてから、治療が終了するまでの通院を精神的にもサポートするトータルな費用が含まれています。

 

開院間もない頃は、体外受精の患者さん以外にも、タイミング指導の方、人工授精の方もいらっしゃいましたので、外来で2時間、3時間お待たせすることもよくありました。その時の反省から、3年ほど前からは体外受精の患者さんのみを拝見して、待ち時間がほとんどない、すこしでもストレスの少ない環境作りをしています。

 

昨年4月からの保険適応に伴って、体外受精にも保険点数がつきました。患者さんにとって、3割負担はとても良いことなのですが、処置(技術)だけを切り離して保険点数化され、精神的サポートは考慮されていない(時間をかけて患者さんに説明しても費用が発生しない)ところに問題があります。つまり、保険診療を行うには、時間をかけて説明するよりも、数多くの患者さんを採卵・移植する必要が生じるのです。

 

転院されてくる患者さんの中には、体外受精を何回か受けているのに、ほとんど体外受精についての知識がない方もいます。そのような場合、あらためてそれまでの治療を振り返って、どのような治療をしてきたのか、なぜ結果が出なかったのか、今後どのような治療の方法があるのか、などを一緒に考えて説明します。「納得していただけるまで丁寧に説明をすること」は、8つある当院の診療理念の一つです。

 

当院では、体外受精で妊娠する方の65%は、1回目の採卵で得られた受精卵で妊娠しています。安心して落ち着いて治療に望んでいただけるよう、私達は全力でサポートします。治療のペースは皆さんが決めていいのです。疲れたら休みましょう。悩む時や決断する必要のある時はいつもより長く相談の時間をとりましょう。最終ゴールがどこであっても、私達は皆さんに伴走します。

 

 

 

 

定額費用は好評をいただいています

皆さん、こんにちは。ようやく暖かくなってきましたが、花粉症を持つ人にはつらい時期になりましたね。私も点鼻薬と飲み薬で何とかしのいでいますが、今年はかなり多くの花粉が飛ぶそうですから、お互い気をつけて生活しましょう。

 

さて、今回は「定額費用」の現状についてご説明します。当院では全て自費診療ですが、昨年2022年11月から採卵周期と凍結胚移植周期に定額費用制度を導入しており(詳しくはHP 「費用について」をご覧ください)、好評をいただいています。採卵周期では、採卵前に8-10日間卵巣刺激を行って複数の卵胞(卵子)を育てますが、それに必要な注射や超音波診察、採卵(局所または静脈麻酔)、胚培養全てを含めて定額の440,000円としました。定額制にした一番の理由は、その治療周期がベストな結果につながるよう、必要と思われることを費用の心配なく安心して受けていいただきたいからです。卵巣刺激は簡単なようで実は奥が深いものです。卵胞の発育速度はまちまちでサイズは不揃いですから、どのタイミングで採卵するかを決めるには、きめの細かな診察が必要です。時期が早すぎれば未熟な卵子が多くなりますし、遅すぎれば過熟な卵子が多くなったり、採卵までに排卵してしまったりします。また、刺激注射に反応が良すぎる方(例えば、多嚢胞性卵巣の方や、AMHの値が高い方)は卵巣過剰刺激症候群になるリスクが高いですから、こまめな診察を必要とします。つまり、診察回数に制限がある保険診療では、ベストな結果にならなかったり、合併症を引き起こしたりする可能性があります。

さらに、定額費用440,000円には胚1個の凍結費用も含まれますから、たとえ胚の評価(グレード)が低かったとしても、その胚が唯一の胚盤胞であれば、費用のことは気にせず凍結していただくことができます。

 

私達の目指すものは、できるだけ1回の採卵で妊娠に至る卵子を得ることです。それを安全に、ストレスなく(少なく)達成していただけるように、最善を尽くします。

今後の診療について

皆様こんにちは。

いつも当院の診療にご理解とご協力をいただきまして、心より感謝申し上げます。

段々と春の気配が感じられるようになりましたね。

この時期、花粉症の方は非常にお辛い時期かと思われます。

どうぞお大事になさって下さい。

 

さて、今回は4月以降の当院の診療についてお伝えしたいと思い、こちらのブログに書かせていただきました。

現在、当院の休診日は水・日・祝日と土曜日の午後ですが、

4月から火・金・祝日と木曜日の午後が休診日となります( 月・水・土・日は終日、木は午前のみ診療を行います)。

診療時間は今と同じです。

採卵・移植は、休診日以外で対応いたしますので土曜日・日曜日も実施いたします。

医師からご指示があった方やお仕事等で都合がつかない方は、休診日( 火・金・祝日)の午前中に診察を行いますのでご安心下さい。

初診の予約枠も変更になりますので、決定しましたらお知らせいたします。

 

休診日を変更した理由は、平日仕事をされている方の通院の負担軽減と、

第2子以降の治療でご通院中の方で「土日であれば夫に子どもを預けられるため通院しやすい」というご意見もお伺いし、

少しでも皆様が通院をしやすい環境作りを行いたかった為です。

 

これからも、変わらず一人ひとりの方ときちんと向き合い、丁寧な診療を続けてまいります。

診療運営についてご意見やご感想がございましたら、ぜひ教えていただけましたら幸いです。

少しでも皆様がご通院しやすいよう、これからも努力してまいります。

 

 

看護部  平良

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初心を忘れずに

皆さん、新年明けましておめでとうございます。国内、国外いろいろな世情を考えると、新しい年を迎えられるだけでも幸せなことですね。

 

本日からクリニックに出勤していますが、少し時間があったので、看護師長の平良さんと昔話をしました。開業から8年半、ずっと支え続けてくれるスタッフは平良さんだけです。開業したばかりの頃、一日の終わりにビルの地下へ一緒に段ボールを片づけに行っていましたが、その際平良さんからよく「先生は、どんなクリニックにしたいのですか」と聞かれました。私は「患者さんに寄り添えるクリニック、もし妊娠できなかったとしても患者さんが通って良かったと思えるクリニックにしたい」と答えていました。また「平良さんには、患者さんを縦に診て欲しい。そして、自身の身体や治療について一番良く知っている患者さんから教わってください」と話しました。「縦に診る」というのは、患者さんの来院日だけの対応ではなく、治療周期を通じて思いを馳せて接するということです。そのためには、看護師としての力量に加えて、正しい医学的知識、そして人として関わる力が必要です。平良さんにはもともと人として関わる力がありますし、医学的知識は日々コツコツと実直に仕事を積み上げることで身につけ、本当に全ての患者さんを縦に診てくれています。患者さんの中には、平良さんがいるから横浜HARTに通院してくださる方もいます。診察室で私と話をした後に、私がうまく伝えられなかったり不十分だったりしたことを、平良さんがよりわかりやすく、それぞれの患者さんに寄り添って説明してくれます。患者さんにとってはとても安心できることでしょう。素晴らしいことです。

 

この診療スタイルこそが横浜HARTクリニックの存在価値だと思っています。誠実に「患者さんに寄り添うこと」が私達が実践してきたことです。そうすることで、治療周期、一周期一周期を大切にした、保険に縛られない治療が可能となり、高い妊娠率に結び付くのです。それぞれの方を縦に診ていますから、診療内容によって予約枠も調整でき、長くお待たせすることもありません。不必要なストレスを軽減して、最短の通院で結果に到達できるよう、一緒に頑張ってみませんか?

今年も一年間ありがとうございました

皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか?

2022年もあと一週間になりました。どんな一年をお過ごしになられたのでしょうか?

 

 

私は今年一年の診療を振り返って、2つ書いておきたいことがあります。

 

 

一つ目は、今年4月以降も自費診療のまま通院していただいている方々への感謝です。自費診療を続けることで、実際、患者さんの数は減りました。それでも、これまで続けてきた「患者さんを人として診る不妊治療」を行うには、保険診療では難しいと判断して考えた結果、今日まで自費診療を継続しています。3割負担とはいっても体外受精は決して安い金額ではありませんし、安いからと回数を重ねるにはストレスが大きい治療です。患者さんを人としてサポートしながら、一周期一周期がベストになるよう、薬剤や診察回数の制約なく治療を行うことが、妊娠への近道だと考えています。

臨床成績についてはホームページ「当院の実績」を、また現在実施している定額費用については「費用について」をぜひご覧ください。

 

 

二つ目は、卵子提供についてです。今年9月のブログに書いた通り、実際に治療に進む方は少数ですが、問い合わせは多くいただきます。もちろん、当院の本来の治療はご夫婦間であり、卵子提供は一部の方のみを対象にしています。ホームページに卵子提供治療や、ドナーやレシピエントの募集を掲げているのは、日本国内で、覚悟を決めて卵子提供による不妊治療を受けよう、卵子を提供しようという方がいるのかを知りたいからです。法的には禁止も是認もされていませんから、当事者、医療従事者、関係者がそれぞれに責任を持って向き合うことが大切です。隠れてこそこそするから、卵子提供が悪いことのように思われ、生まれてくる子供に告知しにくい状況が生まれるのです。体外受精が保険適応になったことで「不妊治療が疾患として認められたようで、職場で通院のことが話しやすくなった」という意見があるそうですが、それと同じことだと思います。

 

横浜HARTクリニックは少人数で運営していますが、それは患者さん一人一人の顔が見える関係を生み、その方に合った治療をきちんと納得していただいた上で提供できることにつながります。技術はもちろんですが、保険点数にない、「人」「心」の部分を大切にしています。治療に疲れた、話を聞いてほしいなあ、という方はぜひ一度ご相談ください。

 

 

少し早いですが、皆さん、良いお年をお迎えください。

2023年が皆さんにとって、より良い年でありますように。

Wishing you a Merry Christmas and a Happy New Year!

 

費用を見直しています

皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか。

今年4月から体外受精の保険適応が開始して、半年が過ぎました。皆さんそれぞれの思いで頑張っていらっしゃることと思います。横浜HARTクリニックでは、自費診療を続けていて、その理由はこれまでにも何度か書いてきました。一番の思いは、一回一回の治療周期を大切に、最大限の効果を生み出すために最良の選択をし、精神的なケアも含めた全人的な治療をしたいということです。

 

保険診療になって3割負担とはいっても決して安い治療ではありません。また、どの生理周期にも同じように良い卵子が育つわけではありません。治療に選んだ周期が良い(妊娠に至る卵子が含まれている)のであれば、使用する薬剤や超音波診察回数の制限を気にすることなく、ベストを尽くしたい。場合によっては、輸入製剤を使用することもあります。

 

このような思いは変わりませんが、4月から導入された保険診療に伴う保険点数を考えると、当院が4月以前から決めている自費の費用が、かなり割高に感じられることは否めません。私たちも医療従事者として、皆さんのお役に立ちたいですし、心の通った、本物の不妊治療を提供したいという強い思いがあります。

 

そこで、いろいろ思い悩みながら、自費ではありますが、保険診療による費用も参考にして、定額費用による治療を検討しています。採卵周期が始まったら、胚培養(胚凍結)が終了するまでを定額費用に決めるというものです。来院の度にいくらかかるかと心配いただかなくてよくなりますし、実際都度会計でのお支払いの手間がありません。質を落とすことなく、これまで通りの治療を一人でも多くの方に受けていただきたく準備中です。近々、ホームページ上に出しますので、ぜひご一考ください。

良い卵子と精子があれば(2)

こんにちは。昨日のブログの続きです。

 

横浜HARTクリニックでは、凍結胚盤胞の2個に1個が着床するとお話ししました。

患者さんに「胚盤胞が凍結できましたよ」とお伝えすると、「私が妊娠する確率はどのくらいですか」と聞かれます。

 

凍結胚盤胞が3個あるとしましょう。1回の採卵周期で3個できる方もいれば、1回の採卵で1個ずつ、3回の採卵周期で3個できる方もいます。いずれにしても、3個の胚盤胞を1個ずつ移植する場合を考えてみましょう。1個ずつの着床確率が 1/2 ですから、「3個とも着床しない」確率は、

(1/2) x (1/2) x (1/2) = 1/8 = 0.125

になります。すなわち、胚盤胞が3個あっても、12.5% の方が妊娠に至らない計算になります。言いかえると、100 – 12.5 = 87.5% の方は少なくとも1回(1回、2回、または3回)妊娠するということです。

 

これは、純粋な算数計算ですが、実際当院では80%以上の方は妊娠に至っていますから、計算値と臨床妊娠率はほぼ合致しています。このことから、二つのことがわかります。

 

まず、計算値とは受精卵以外の条件を一切考慮しない理想値ですから、計算値と臨床妊娠率が合致するということは、子宮の原因によって妊娠しない方は非常に少ないということです。つまり、子宮因子、例えば NK 細胞、Th1/Th2 等の免疫的な原因や、着床の窓といった移植の時期のずれによる着床不全はあまり気にしなくてもいいということです。

 

もう一点は、計算値通りの妊娠率が得られているということは、胚盤胞の凍結、移植周期の子宮内膜の準備、胚融解、胚移植手技の一つ一つが確実に行われているということです。クリニック各部署の仕事だけではなく、患者さんも説明された通りにきちんと薬を使っていただいている証です。

 

患者さんを「人として診る」ことで、より深い不妊治療を行うことができます。できるだけ多くの情報を得て、その方にあった適切な治療計画を立て、治療のステップ一つ一つを丁寧に進めることによって、シンプルながらも最大限の効果を得ることができます。そのスタートは「よい卵子を得ること」です。検査に時間と費用をかけるよりは、新たな採卵を1回行うことで良い卵子を得る確率を高めることを私は選択します。

良い卵子と精子があれば

皆さん、こんにちは。肌寒くなってきましたが、秋晴れの空がさわやかですね。

 

不妊治療がうまくいくかどうかは、良い卵子と精子が得られるかどうかにかかっています。

精子は一回の射精でたくさん得られますから、主に卵子の質によって決まります。

 

卵子の質を高めようと、DHEAや成長ホルモン(GH)など、過去に様々なもの(こと)がトライされました。私も一通りのことは試してみましたが、残念ながらはっきりとした効果の認められるもの(こと)はありませんでした。結局何かの効果というよりは、もう一周期採卵をしたことで、よい卵子に出会えたと考える方が現実的です。

 

横浜HARTクリニックには、体外受精をしてもなかなか妊娠に至らない方が来られます。そういう方々が妊娠されたことを振り返ってみて、いつも不思議に思うのです。すでにタイムラプスによる胚観察やPGT-Aなど、いろいろな検査をしてこられる方が多いのですが、逆に当院では、そういう「付加的検査(add-on)」を一切することなく、基本に忠実なシンプルな治療をしています。その結果、採卵の時点で質の高い(妊娠できる)卵子が得られているということです。

 

当院の最大の特徴は、(1)スタッフ全員で一人ひとりの患者さんを「人として診る」こと、(2)卵子、精子、受精卵の「生きる可能性」を信じることです。

 

(1)については、技術を提供するだけでなく、患者さんを全人的に診て、治療について正しく理解していただく。クリニックに安心感を持ち、スタッフを信頼して通院していただくことです。科学的に証明はできませんが、その安心感、信頼感が、卵巣の中の卵子が持つ、本来の力を引き出すことが出来るのかもしれないと思っています。エピジェネティックスというのでしょうか。30年近く患者さんを診てきてそう思います。

 

外来では看護師長平良さんの力も大きいです。医師には遠慮してしまうけれど、平良さんには話せる、ぜひ話したい、聞いてほしいということも多いと思います。注射の仕方や日々の過ごし方でもいいし、夫婦や職場のこと、直接治療と関係なさそうに思えることでもいいのです。ちょっとした情報を治療に活かすことでよりリラックスしてご通院いただけます。

 

(2)については、受精卵を患者さんの不妊原因と照らし合わせて総合的に判断するということです。私(後藤)は全ての患者さんの受精、培養、凍結、融解の培養業務に直接関わっています。受精方法を決めたり、どの胚を凍結するかを決めたり、場合によっては実際に媒精したり凍結したりしています。BC胚盤胞でも、その治療周期のベスト胚であれば凍結することはありますし、流産経験のある方では、正常な受精(2PN)が確認できなければ、AAでも凍結しないことがあります。それぞれの方の臨床背景を考えて最良の結果が得られ、かつ経済的、身体的、心理的負担が少なくなるように決めています。

 

当院の刺激周期採卵では、70-80%の治療周期で胚盤胞が得られます。そして、凍結融解胚盤胞移植の妊娠率は50%、つまり胚盤胞2個に1個は着床します。流産率は15%程度です。この着床率、流産率はPGT-Aをした場合の多くの報告と変わりません。PGT-Aをする場合には、異常胚として廃棄される胚盤胞が多くありますから、当院の成績は、より少ない数の胚盤胞で妊娠に至ることを示しています。

 

シンプルな治療方針ですが、(1)、(2)のように、一つ一つのステップを丁寧に行うことで、体外受精で妊娠される方の90%の方が3回までの採卵で力のある卵子に出会うことができ妊娠に至っています。

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